真珠子展「リボンヶ丘」~もしもし、子どものわたしへ~ 特別インタビュー
vanilla-gallery (2013年11月29日 15:32)
2011年の個展に続き、2度目の展覧会の開催となる真珠子さん。
今回の展覧会は「もう一度抒情を考える。」と、そこから展覧会の構想がスタートいたしました。
そして一面に野生のリボンが咲き乱れるリボンヶ丘が再現され、観るもの全てを圧倒するような個展会場となりました。
この空間を作り上げた真珠子さんに、この展覧会に付いてお聞きしてみました。
V:イベントも終わり、展覧会もいよいよ今週末までですね。
今回の展覧会出品作品について教えて下さい。
真珠子(以下真):展覧会のオファーがあり、今何を制作するか、という事は自分の中で立ち止まって考えたい事でした。
描く事は日常の中で、頭の中にイメージが出てきたら描いているのですが、頭の中を整理して、今一番何が描きたいか今一度考えてみました。
私はここ10年の間で作品がどんどん変化していて、それはタブロー作品だけではなくて、映像も含めてです。
今会場で流している昔制作した映像作品は全て私が声をあてているのですが、それを言うと皆驚くのです。
声まで変わっているって(笑)
今年の夏に寺山修司の展覧会を見に行って、その時に自分が忘れていたことを色々と思い出したのです。
寺山さんが好きだったこととか、竹久夢二が好きだったこととかですね。それで自分の事を振り返りたくなったのです。
自分が何に感動したのか、何を伝えたいのか、どのように自分が変化をしているのか、ずっとつけている日記を読み返してみました。
そこに昔大人になった時の自分に宛てて書いていた手紙を見つけたのです。
その手紙を書いてくれた小さい頃の私に対する返事を書きたいと思いました。リボンヶ丘を見せてあげたいと思ったのです。
V:それでこのインスタレーションが誕生したのですね。圧巻の光景なのですが、中に足を踏み入れると非常に落ち着くという...
真:皆が座ってピクニックできるような、寝転がって手紙が書けるような場所ですね。
V:また、この咲き誇るリボンの数には圧倒されました。
真:リボンは私の心です。いつもリボンをテーマに制作をしていたのですが、心の中でリボンが野生化してきたのです。
昔は畑で丁寧に水を与えたりしてリボンを作っていたイメージなのですが、今回はどんどん野生化して群生して、丘に咲き乱れたのです。
最初はこのリボンも型を作って制作しようかとも思いましたが、1点ずつ心赴くままに形作る方が気持ち良い線で制作する事ができました。
V:リボン一つずつに、その時々の真珠子さんの気持ちがつまっていて、一つ一つ見ていくのが楽しいです。
これはとても女性的なリボンだな...とか(笑)これは自己主張が強いな...とか。
真:制作においては偶然性を大事にしています。何が出来上がるかわかっててつくるものほどつまらないものは無いと思っています。
今回制作したこのリボンの線がとても気持ち良くて、これはずっとライフワークとして作っていきたいと思いました。
V:今回は今まで書き溜めていた日記も一部公開していますね。
真:36年分!(笑)読み返してみると当時から自分を客観視している子どもでした。
外から変わっていく自分を眺めるのが好きだったのだなと思いました。
それで、外から見た記録・資料的な意味で、「真珠子37才」という今回展示した作品と、写真を盛り込んだ本を制作しました。
これから38・39とずっと続けていきたいですね(笑)自分でもどんな変化があるか、楽しみです。
V:会期半ばのイベントもとても盛況でしたね。
真:イベントの時には私がしっかり司会をして、ヴィヴィアン佐藤さん、祖父江慎さん、レディシロウさんの、お姉様から色々とお話を引き出さなくてはと、事前にかなり準備をしてきたのですが、
お姉様方からは、私の予想をはるかに上回る凄いお話の連続でした。
私はこういった場で、突然難しい事を聞いて、意地悪な質問で相手をいじめたくなるのですが、(笑)
予想をはるかに上回る答えを、それも斜め上の答えをポンと返してくれるのです。
この3人とお話する世間話は、いつも物凄い世間話で(笑)いつかこの世間話を皆に聞かせたいと思っていたので、
お姉様とイベントを開催出来て嬉しかったです。
V:記録も残しているので、いつか真珠子さんとお姉様のトークをお披露目できるといいですね。
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V:話は戻るのですが、展示されている日記にこの展示のテーマのきっかけとなった寺山修司と出会った時のことが記録されていて、それが凄く面白かったです。
真:とても上から目線で寺山さんの事を語っている(笑)
でも寺山さんの詩から生まれた、私の名前の事も今回思い出したのです。
V:そういう意味合いであのページが公開されていたのですね。
是非多くの皆様に、その出会いのページを見て頂きたいと思います。
真珠子さん、ありがとうございました。
「真珠」
もしも あたしがおとなになって
けっこんして こどもをうむようになったら
お月さまをみて ひとりでなみだをながすことも なくなるだろうと
さかなの女の子はおもいました
だからこの大切ななみだを 海のみずとまじりあわないように だいじにとっておきたいと 貝のなかにしまいました
そしてさかなの女の子はおとなになって そのことを忘れてしまいました
でも 真珠はいつまでも 貝のなかで 女の子がむかえにきてくれるのを まっていたのです
さかなの女の子 それは だあれ?
角川文庫「寺山修司少女詩集」より
ヴァニラ画廊内部に咲き乱れる野生のリボン、真珠子展「リボンヶ丘」は今週末11月30日までの開催となります。
是非この圧巻のインスタレーションを体感下さい。
'13/11/18 〜 11/30 真珠子展「リボンヶ丘」~もしもし、子どものわたしへ~
入場料600円ヴァニラ画廊A室
http://www.vanilla-gallery.com/archives/2013/20131118a.html
~もしもし、大人のわたし様~
いかがお過ごしですか?この手紙は時空を超えて、未来の私の元に届くでしょう。
わたしは今、なにを見ていますか?~
子どもの頃、大人になった自分に手紙を書いていた。
~もしもし、子どものわたしさま~
見せてあげるね。大人になるのが怖かったわたしさま。
リボンは、野生化し、群生し、そこは、リボンヶ丘と呼ばれたよ。
真珠子の新作展を開催致します。今回のテーマは「今、もう一度、「叙情」を考える。」