ヴァニラ画報

ヴァニラ画廊 展示やイベント、物販情報などを随時発信していきます。

与偶人形作品展「フルケロイド ~FULLKELOID DOLLS~」与偶インタビュー

救いようのない感情から産み堕とされる、
心の幼きを止められた人形たち…

 

ヴァニラ画廊では、現在与偶の人形展を開催中です。

「人形作品」と一言で言っても、壊れそうなほど繊細なものから、粗削りでも存在感のある作品まで、その姿形は様々です。

その中で与偶さんの制作する人形作品は異質とも言っていいほど特徴的な姿をしています。

大きく引き攣れたような手足の指先、見開いた大きな瞳は、片方が閉じられ血の涙を流していますが、それらは、なぜだか痛々しくはなく、強い意思を持って立ち上がっているように見えます。

13年ぶりの個展となる与偶さんに、今回の展示に付いて、お話を伺いました。

 

f:id:vanillagallery:20170814162150j:plain

ヴァニラ画廊(以下V)今回のメインの作品は両目を開けていますね。
与偶(以下Y)この作品は大型の球体関節人形としては、一番新しい作品です。私が作る人形の両目は、それを作っている時点の自分の精神状態によって、開けるのか、伏せるのかが自然と決まります。私は人形を制作する際に下絵などは特に描かないので、このときも無意識的に両目を開けさせたんですね。

昔の作品は片眼をつむっている作品が多いですが、これは外界からの抑圧につぶされて、内面を見つめるために片目をとじているのです。もう片方の開いた目は、そんな悪い状況であっても戦うために、現実に目線を向けているのです。

こう片方の眼で、じっと物事を見ていて、片方はもう見ていられなくてつむってしまった状態。そのつむってしまった片方の眼からはダメージを受けて血が流れているんです。これは自分の身体に傷をつけ、溢れ出た血を直接筆に浸けたもので描いています。完成型では見えない部分、球体関節人形のがらんどうの各パーツの内側にも、自分の血を塗り込んでいる作品もあります。

人形の目…視線を第一に強調したいので、新たな一体を作り始める時も、先ず目の周辺から作り始めます。眼球は頭部を造形するときに最初に粘土に埋めてしまうんです。目の表情が決まると、人形の全体像がおのずと見えてくる。目と表情が先ず出来てから、全身像を作り上げていくのが私のやり方です。

 

f:id:vanillagallery:20170814162120j:plain  f:id:vanillagallery:20170814162132j:plain

V 与偶さんの作品は歯もとても特徴的ですね。
Y 普通の歯ではないんですよね、こう、牙のような…食いしばるような、何か切り裂くものを持たせる意味合いです。
最新作の子はその牙の代わりにハサミを持たせています。

今回の個展は、私が高校生の時分に一番初めに制作した球体関節人形も展示しているのですが、その頃はネットの記事で読み知った通り、原寸大の下図を描いてから、発泡スチロールを一回り小さく削り出し、そこに石粉粘土を薄く盛って作っていますから、非常に軽量です。
最近は、発泡スチロールを芯にはしていても、直感的に盛り削って、途中でフォルムを大きく変えたりもするので、粘土の厚みが増して、かなり重たい人形になっていますね。

 

V 球体関節人形作品と一緒に、フィギュア作品も今回多く出品いただいております。
Y フィギュア作品もまず初めに顔を作ってから全体を造形していきます。オーブンで熱硬化させる樹脂粘土で制作しているのですが、自宅にオーブンが無かったときは、代わりに髪を乾かすために使うドライヤーの熱を当てるという自己流のやり方で作っていました。

V 与偶さんにとって球体関節人形と、フィギュア作品はどう作り分けているのですか?
Y フィギュアは私の内面のおとぎばなしの断片で作られています。周辺までストーリーを作り込みたいので、背景やベースも作っています。

f:id:vanillagallery:20170814162109j:plain

 V 今回の展覧会タイトル・作品集のタイトルになった「フルケロイド ~FULLKELOID DOLLS~」にはどういった意味が込められているのでしょうか。

Y 「ケロイド」とは傷ついた証であり、ケロイド状態になっているということは、その傷が塞がって医療的、外科的には治ったとしても、痕跡と心の傷は消えずに残っているわけです。
私はその苦痛を背負いながら生きていく、生き抜いていく、たとえ、心と身体のすべてがケロイドで覆われていても…と言う意味合いの造語が「フルケロイド」なのです。

 

V 最後に、与偶さんに、今回の個展について、お客様に伝えたいメッセージを入れていただければと思っております。
Y たとえ晴れることのない暗闇の中の世界に生きていても、暗闇からでも得られる自分自身のおとぎ話を心のよりどころにしてほしい。死に魅せられていても、様々なものから抑圧されても、抗う人形、戦い続る人形、生き続ける人形…「フルケロイド・ドールズ」という名の、命の塊を感じてください。
(2017.8.12)

 

f:id:vanillagallery:20170814162144j:plain


今回の個展では、インタビューに登場した高校時代の初めて製作した球体関節人形から、最新作まで、作りためてきた52作品が並び、サイン入りの作品集の販売もございます。
会期は今週20日(日)まで、この貴重な展覧会をどうぞお見逃しなく。

 

与偶 人形作品展「フルケロイド ~FULLKELOID DOLLS~」
http://www.vanilla-gallery.com/archives/2017/20170808a.html

2017年8月8日(火)~8月20日(日)
営業時間・月曜日~金曜日12:00~19:00
土日祝、最終日:12:00~17:00
※日曜日も営業いたします。

入場料500円


Yogu Doll Works Exhibition "Full Keloid ~ FULLKELOID DOLLS ~"
Dates - August 8 (Tue) - August 20 (Sun) in 2017
Business hours · Monday - Friday 12: 00 ~ 19: 00
Saturday, Sunday and public holidays, last day: 12: 00 ~ 17: 00
※ We will open on Sunday.