ヴァニラ画報

ヴァニラ画廊 展示やイベント、物販情報などを随時発信していきます。

Ciou展「Cosmic Fantasy」

 
現在ヴァニラ画廊では、フランスの作家CIOUの個展を開催中です。
展覧会開催にあたり、来日したCIOUさんに制作のお話を伺いました。

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ヴァニラ画廊(以下V)
今回の展覧会で展示してある作品は、前回初めて来日した際に、色々とインスパイアを受けて制作したものとお聞きしました。
 
CIOU(以下、C)
私は元々、幼少期にフランスのテレビで日本のアニメーションや漫画に多く触れあってきました。
そして、日本のアートに関しても幼いころから両親と共に、伝統的なものからポップカルチャーまで幅広く見て育ちました。
なので、前回来日した際には、子供の頃から慣れ親しんだ風景にすっと入っていくような感じがして、とても不思議な感覚を味わいました。
 
新しい作品を描く事は、様々な影響を色々なものから受けますが、実際に日本という国を見て、私の中で思う部分があり、今回の個展の作品は色々と自分の中で湧き上がってきたものを描きました。
国立博物館で見た太平洋の展示や、ミュージアムで見た妖怪の本、(ものが、年を経て妖怪になるという概念がとても面白いと思いました。)日本の自然にはとてもインスパイアされました。
 
V:CIOUさんの作品は、様々な女性像が描かれています。精霊や女神のように描かれている事が多いですが、女性たちを中心に作品を描く理由はありますか?
C:私は自分がパワフルな女性を描く必要があると思っています。
作品にはストーリーがあり、それには主人公がとても重要です。
ゴッドマザーや魔女、タトゥを施した女の子達や女神、強い女性像ミックスして、描いています。
 
V:確かにとてもストーリー性が強い作品が多いと思います。1枚の作品から、様々なストーリーを想像できますね。
C:テーマはアニミズムやニューカルチャー等、抽象的なテーマを考えているので、観る人のイマジネーションを刺激するような作品が描きたいと思っています。

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V:CIOUさんの作品の特徴といってもいい、とても繊細で細かな線描写や、サイケデリックな色使いはどのような形で生まれるのでしょうか。
C:作品の制作は、まず最初にスケッチを行います。イマジネーションが湧くように、自然と触れあい、美術館を訪れ、そして今まで撮りためた写真などに目を通します。
次に、90年代からのイラスト集を見て、モチーフのリサーチを重ねた上で、別々にスケッチしたものを、コラージュ的に1枚の作品の中に納めます。
(別々の紙に描いたものをコラージュしていくやり方です。)
 
紙の上のドローイングの上から、アクリル絵の具で色を重ねた上で、ここから大きな仕事に取り掛かります。
大鏡と、ロットリングペンで細かく線描を重ねていくのです。

f:id:vanillagallery:20171111132756j:plain(作品一部・色の上から細かな線描で描く。)

V:拡大鏡を使って、あの繊細な線描が生まれるのですね。
C:とても根気強く作業を続ける必要があります。道具といえば、日本に来ると、世界堂に行って、画材を買うのも楽しみの一つです。(笑)
私が日本に影響を受けて、作品を生み出したように、私の作品も色々な人の想像力を刺激して、新たなイメージの展開につながればと思います。

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2017.11.08
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CIOU展「Cosmic Fantasy」
11月7日(火)~11月19日(日)
展示室B
入場料500円(展示室AB共通)
平日12:00~19:00
土日祝12:00~17:00
 
Ciouは、フランス南部のトゥールズに生まれました。
80年代に幼少期を過ごした彼女は日本のアニメや漫画、そしてスター・ウォーズ、ディズニー、SF映画を見て育ち、一日中絵を描いていました。
10代になるとジョイ・ディヴィジョン、パンク、グランジ、ハードコア、後にはブラックサバスといった音楽に浸り、
コミックやイラスト、B級映画にアメリカのポップアートカルチャーが混ぜ合わさったローブローアートに、芸術的・美的共感を覚えるようになりました。
2004年にニューヨークでの個展を開催し、その後、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアをはじめ、世界中で展覧会を開催しています。
Ciouはヨーロッパ、アメリカ、メキシコ、そして日本のグラフィック分野を融合させ、自然・死・異教・美しさを描き出します。作品内にダークな側面とキュートな側面を兼ね備え、奇妙で民話的な趣と、空想的なテーマを取り込み、唯一無二のCiouの世界観に昇華するのです。
彼女の絵の世界は、チャーミングな奇人や、異分子、タトゥを施した女の子たち、躍動的に踊るニンフ、夢幻的な動物や、擬人化した植物がアシッドな色彩で描かれ、まるで奇妙なカーニバルに遭遇するような喜びと驚きがあると評されています。
ヴァニラ画廊での今展示「Cosmic Fantasy」では、2016年に来日し、日本の自然の美しさに触発されたCiouが描いた新作(環境、神話、そして、かぐや姫や親指姫、妖怪たちのおとぎ話にインスパイアされた作品)と、立体作品を展示いたします。
驚くほどに繊細でありながら、プリミティブなダイナミズムに満ちたCiouのダークでキュートな世界をどうぞご高覧下さい。
 

Ciouプロフィール

1981年フランス/トゥールズ出身
2004年ニューヨーク Flux Factory galleryにて初個展。
パリ、バルセロナブリュッセルアムステルダム、シアトル、ローマなど各国で展覧会を開催。
La Poste, Morphik, Nookart, ArtsBd , Sony, L’Aubusson等の企業とのコラボレーション多数。
出版
2009年『Chat siamois』editor by Venusdea
2014年『Ciou collected art』Kochxbos Publishers
2016年『Thumbelina』edited by Scutella

ダニエル・ジョンストン展 「HI,HOW ARE YOU?」

人は何かを忘却する事で、内的世界と折り合いをつけ大人になっていく。

全てを忘れなかったダニエル・ジョンストンは、今も私的な宇宙の中で歌い、遊び、愛し、憎む。

悪も善も、聖も俗も尊卑も無い、透明な場所でただひたすらに。

遠くへ行ってしまったイマジナリーフレンド、愛する人へのオブセッション、霞の向こうに消えた夢のひとかけら。

全てを忘れてしまった私たちは、ダニエル・ジョンストンの作品をどう見るべきなのだろうか。

なかった事にしていた傷跡に、郷愁にも似た儚い疼きが必要ならばと、今回ダニエル・ジョンストン・コレクションを開封した。(H.Nakajima)

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ダニエル・ジョンストン展 「HI,HOW ARE YOU?」
会期:2017年10月9日(月・祝)~10月22日(日)
平日(月~金)12:00~19:00、土・日・祝・最終日:12:00~17:00
会場:ヴァニラ画廊 展示室AB 入場料:1000円

 

この度、ヴァニラ画廊ではアメリカのミュージシャンでありアーティストのダニエル・ジョンストンのコレクション展を開催いたします。
ダニエル・ジョンストンは、無垢な表情をしたカエルのような生き物が印象的なジャケットのアルバム「Hi,How are you?」など1980年代から40枚以上ものアルバムを製作

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し、そのシンプルで美しい楽曲はニルヴァーナカート・コバーンデヴィッド・ボウイなど著名なミュージシャンに影響を与え、音楽シーンにおいて神秘的な存在として世界中で熱狂的に支持されています。
2005年にはその半生が綴られたドキュメンタリー映画悪魔とダニエル・ジョンストン』が公開されるなど、アメリカのアンダーグラウンドの象徴としてその名を馳せてきました。

 


氏は音楽と並行して、主題を同様としたアートワークの制作を続けてきました。
作品内に登場するのは、1つ目の不気味な生物や悪魔、彼の永遠の恋人・ローリー、フランケンシュタインなどのモンスター、性と畏敬の対象としての女性、おばけのキャスパーやキャプテン・アメリカといったアメリカン・アイコンの数々です。
サイケディックな色使いで描かれた奇矯なこれらの生物は、彼の心の中の神話的世界観をダイレクトに投影し、各国でカルト的な人気を得ています。
過去にはアメリカ各州、フランス、ベルギー他欧州諸国にて数々の展覧会を開催してきました。
日本で初となるヴィジュアル・アートのコレクション展となる本展では、カラー原画、モノクロ原画をはじめとした100点以上の作品や、活動初期の一本ずつダビングしたカセットテープなどのコレクションの数々を展示販売いたします。
孤高の鬼才・ダニエル・ジョンストンの魅力に触れることができる貴重な機会です。

 

コレクション協力: H.Nakajima, Daniel Johnston

 

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ダニエル・ジョンストン

1961年 アメリカ合衆国ウェストバージニア州出身。
アーティスト、ソングライター、パフォーマーとしてカルト的な人気を博し、創造性に富んだ作品を数多く発表する。1980年代よりトム・ウェイツソニック・ユースカート・コバーンなどアーティストに支持され、数多くのメディアにも取り上げられた。
作曲数は500を超え、彼の人生を綴ったドキュメンタリー映画悪魔とダニエル・ジョンストン』(2009)によって、音楽のみならず、アートや生き様に関心が再び高まっている。彼のアート作品は、2006年のホイットニー美術館の隔年行事にも出展されている。
2006年にHighwire Musicからリリースされた新しいコンピレーション・アルバム「Welcome To My World」、再リリースされた「Hi How Are You / Continued Story」と「Yip Jump Music」を含め、30枚を超える彼のアルバムの半数以上が今なお流通している。
カート・コバーンが着ていたダニエルの「Hi How Are You」Tシャツは、2006年にヒューストン・クロニクル紙で「世界中で最も需要の高いインディー・アーチストのTシャツ」と評されている。
米国をはじめ、カナダ、ヨーロッパ諸国、日本などでツアーの実績もあり、2003年、2010年と来日を果たし、ライブを行った。

 

 

 

 

 

 

髙木智広展「兎狩り」

 

100号のキャンバスに描かれた「兎狩り」と題された作品。巨大な兎にまたがった女性像は、朝焼けの中で勝利を鼓舞する武者絵のようにも、その白装束から古代の神の姿のようにも見える。
作品のダイナミズムと呼応するように、命のスパイラルの上にある歓喜と哀感に満ちた咆哮が聞こえてくるようだ。

髙木智広は1995年にヨーロッパで古典絵画技法を研究し、一貫して作品テーマの根幹には自然と人との繋がりを据え、数々の個展、グループ展で油彩作品を発表し続けている。
人と動物が混じりあい生まれた半人半獣の神話画のような様式美と奇想的な楽園を思わせる卓越したビジョンを提示してきた気鋭の作家である。

今回2年ぶりとなる弊画廊での個展では、近年の代表作から、最新作までこれまでの活動を総覧できる作品点数を出品いただいている。

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2連作の「雨宿り」1つはしとしとと滴る雨水の向こう側にぼんやりと馬の姿が浮かぶ
そのたてがみの中には暗い面持ちをした女が、何かから身を守るように、じっとこちらを見つめている。対するもう1つは馬の姿は骨のみになり、やはりその向こうから女が怪訝な顔で濡れた空を見ている。
その姿は北欧神話の夜の女神ノートが如く、地を濡らす化身のような存在感と不気味さを彷彿とさせる。

 

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「rabbit hole」「狼少女」「rabbit bandage girl」「輪廻」といった一連の作品では、少女と動物たちがまさに溶けるように混じりあい、互いを身にまとい、カオスが生み出した女神ニュクスのように、暗闇の中から立ち現れるその姿は優雅な官能すら醸し出す。

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そして「夕顔」では今度は白い魂のような人体が呼応しあい、絡み合いながら、新しい生命体へとその姿を変えていく。
朽ちていく肉体、滅びゆく魂と共に、祈りの中に生まれた新たな胎動すらも感じる大作である。(この作品は、2016年弊画廊で開催した「幽霊画廊」に出品いただいた。)

 

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また、近年の代表作の中でも異色作であると言える「烏賊を運ぶ日」。
2015年に描かれたこの作品は、一見ユーモラスでシュールな面が顔を覗かせるが、その実、艶めかしい暗喩、神話的な情景、そしてグロテスクな土着的神秘性に満ち溢れ、暗いノスタルジーの中を彷徨うような、覚めない白昼夢の中に見るものを誘う怖い絵である。

 

 


総じて、自然と人間の関係から、異様で恐ろしくもありながら、同時に豊穣で郷愁的な世界を真摯に、そして克明に描き出してきた作家、高木智広。
今展示はその旧作から新作までを包括的に振り返る事のできる貴重な機会となる。

(ヴァニラ画廊田口)
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髙木智広展「兎狩り」

2017/9/26(火)〜10/7(土)
http://www.vanilla-gallery.com/archives/2017/20170926a.html
ヴァニラ画廊 展示室A
入場料500円(展覧会室AB共通)
営業時間
平日/12:00-19:00 土,日/12:00-17:00(会期中無休)

今展「兎狩り」では、兎を受難の象徴として、様々な視点から描いた絵画作品を展示します。
それを通じて人間の狂気、自然の猛威など、自然と人間の関係を表現します。(髙木智広)

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高木智広はヨーロッパで古典技法を取得した後、野山で動植物と戯れて過ごした幼少時の原体験と、パプアニューギニアでの滞在で巡り合った精霊信仰から見出した「人間と自然の共生」をテーマに据えながら、自身の作品に色濃く反映させてきました。
ヴァニラ画廊にて2年ぶりとなる個展「兎狩り」では、人間が無意識的かつ半ば暴力的に生み出した自然との「境界線」を、豊穣なイメージの網に迷い込んだ兎に託して克明に描き出します。
旧作から新作まで作品を包括的に振り返りながら、人間と自然の在り方を可視化し、その本質に迫る試みにご期待ください。

◆髙木智広 プロフィール◆
西洋の古典技法を用いた絵画作品を中心に自然と人間の関わりをテーマに制作。
近年では日本人の精神の源流となる八百万の神々をモチーフとしている。
国内外で個展グループ展多数開催。

 

 

愛実人形展「LUST」特別インタビュー

愛実人形展「LUST」作家インタビュー

 

現在ヴァニラ画廊では人形作家の愛実さんの個展を開催中です。

愛実さんの人形作品は圧倒的な力強さと存在感と共に、その瞳には、そこはかとない諦念や、咆哮する慟哭が宿っています。

4年ぶりとなる個展では、総数17体の作品を出品中です。

今回の個展について、愛実さんにお話を伺いました

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ヴァニラ画廊 以下、V

愛実さんはいつ頃から、こういった創作人形を作り始めたのでしょうか。

 

愛実 以下、A

作品を制作し始めたのは、きっかけがあり、2004年に東京都現代美術館で開催された「イノセンス球体関節人形展」を見てからです。

ちょうどその時期に、仕事が終わるのが遅い時間で、家に帰った後にテレビをつけると、ちょうど攻殻機動隊のアニメが終わる時間帯でした。

攻殻機動隊は全く知らなかったのですが、その終わりの時間帯に何度も「イノセンス球体関節人形展」のCMをやっていて、吉田良先生や、四谷シモン先生の作品をぼんやり見ていました。

どうやら人形展をやっているらしい…と。

 

それまでは人形といったらリカちゃん人形の知識しかなかったのですが、ちょうど仕事の暇な日、ふとその展覧会の事を思い出して、足を運びました。

それが展覧会の最終日でした。

 

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初めて見た球体関節人形の世界で、何かを表現している人形たちにとても感動して、これが欲しいではなく、私も作りたいと思ってしまいました。

あの時展覧会を見に行かなかったら、多分創作活動もしていないし、こういった人生を歩むこともなかったかと思います。(笑)

 

その時に見た作家さんで、とても強く惹かれたのが吉田良先生でした。

それで吉田先生の教室を探して、教室に通う申し込みをしたのですが、入るまで約半年ほど順番待ちでした。私と同じ思いの人がたくさんいたようです。(笑)

 

 

V そこで初めて人形制作を始めたのですね。

A 本当の意味で一番初めに作ったのは、教室に入る前に半年くらい時間があったので、その間に独学で1体作っていました。

色々と試してみたのですが、鉄人28号のようなロボットのような、人形らしきものが出来上がりました。(笑)

 

V 吉田先生の元で初めて制作した人形は、目が乳白色で蒼黒い肌の人形だとお聞きしたのですが…。

A 当時は先生に一生懸命、目を白くするにはどうすればいいのかと聞いていました。今回展示してある中で、2、3体目くらいに制作した人形作品もそのイメージに近いですね。

 

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V 愛実さんの作品は、ビジュアル面でもほの暗いイメージが強いのですが、本質的な部分でそういった嗜好なのでしょうか。

A いや、あまりよく自分ではわからないのですが、自宅にあったダリやムンクの画集はよく見ていました。

後、海の図鑑の中では深海魚のページが特に好きだったので、具体的にはお伝え出来なのですが、そういった暗いイメージに惹かれる傾向はあったのかもしれません。

 

V 今回のメインの作品も、人の形をしていますが、何か人ではないようなオーラを放っていますね。

A この作品は色々な意味で、境界線上に立っているような作品にしたかったからでしょうか。

製作していくうちに、感情や存在の境界線に佇んでいるような人形のイメージを強く抱くようになりました。

 

V 立体は形として制作するので、特に境界線上の表現は難しいと思うのですが、愛実さんの作品はその境界を壊してくるようなインパクトがあります。

この手足が黒い人形もそういう意味合いが強いですね。

A そうですね。人体が統一されていない事で、ヒトガタと相反するものをこの作品に投影している部分はあります。

V 確かにこういった表現は、愛実さんの生き人形のようなリアルさがあるからこそ映えるものだと思います。

A 勢いだけでは作り切れない部分が多すぎて、表現するにはどうしても技術が必要です。

まだまだ勉強中の身ですが試行錯誤していく先に、作りたいものがなんとか作れるようになってきました。

 

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V 今回の展覧会のタイトル「LUST」ですが、これは愛実さん自身の人形作品を作りたいという欲求の意味なのですね。

A 人形を作りたいという欲求のサイクルがずっと途切れることなくいるのはどういうことなのだろうと自問です。

オブジェから人形から繰り返して制作したいというサイクルをずっと繰り返しているので。

ただずっとそのサイクルの中にいるというのは飽きっぽいからかもしれませんが…。

 

V 全然飽きっぽくないですよ!(笑)

今回は新作が5体、過去作も含めて17体の作品から、愛実さんの創作をより深く感じる事ができるのではと思います。

A 是非楽しんでいただければと思います。

 

 

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(2017.9月27日)

 

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愛実人形展「LUST」

2017年9月26日(火)〜10月7日(土)展示室B 入場料500円

(展覧会室AB共通)平日(月~金)12:00~19:00 土・日・祝・最終日:12:00~17:00

(会期中無休)

http://www.vanilla-gallery.com/archives/2017/20170926b.html

人形を作りたいという強い気持ちが湧き上がってきます。何処から来るのでしょう?この強い欲望は…。


人形作家愛実の2回目の個展を開催いたします。愛実の制作する人形作品は圧倒的な力強さと存在感と共に、その瞳には、そこはかとない諦念や、咆哮する慟哭が宿っています。前回の展示では、等身大の大型作品を始め、痛ましさと切なさを内包する作品を発表し、注目を集めました。4年ぶりとなる個展では、5点の新作を含む作品を展示いたします。今最も注目を集める人形作品をぜひお楽しみください。

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愛実プロフィール

2004年 人形教室ドールスペースピグマリオンへ。吉田良氏に師事。

2013年 個展「release」ヴァニラ画廊

2014年 「ima展」ホルベイン賞受賞

2016年 「幽霊画廊Ⅲ展」ヴァニラ画廊

「幻獣神話展Ⅲ」Bunkamuraギャラリー

「Doll’s Show」六本木ストライプハウス

「人・形展」丸善・丸の内本店

「ima展」東京都美術館

2017年 「Borderless Dolls ヒトガタのなかの7つの世界」FEI ART MUSEUM YOKOHAMA
村崎百郎UMA展」ギャラリーソコソコその他グループ展、企画展多数参加。

 

 

 

戸野塚はづき個展「優しい苦痛」作家インタビュー

 
 
昨年第五回のヴァニラ画廊大賞で大賞を受賞した戸野塚はづきさんの個展を現在開催中です。
受賞作から新作まで並ぶ展示では、痛みをより視覚的に感じさせる作品が並びます。
今回の個展について、戸野塚さんにお話を伺いました。
 
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ヴァニラ画廊(以下V) ヴァニラ画廊大賞の大賞作受賞、おめでとうございました。
戸野塚(以下T) ありがとうございます。
V 受賞時、戸野塚さんはまだ大学生でいらっしゃいましたが、何でこの公募をお知りになったのでしょうか。
T 当時日芸の学生だったのですが、大学のチラシ置き場に、コンペや企画展のチラシを置くスペースがあり、そこでこの公募がある事を知り、教授からも、あなたはこういうのが好きでしょうとお勧めされました。
 
V かなりニッチな公募ですが…笑
教授は戸野塚さんの作品を熟知していたのですね。
 
T そうですね。私がどういった作品を描くのか、よく知っている方です。笑
作品自体はヴァニラ画廊大賞に応募するという前提で、卒業制作としても描いていたので、大きい作品サイズで描きました。

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                               受賞作「苦しみと輪廻 巡る」 
 
 
V 審査の時も、大きさも相まってとてもインパクトが強く、審査員一同驚いていました。
審議を重ね、第五回のヴァニラ画廊大賞をこの作品にしようと、最後は皆一致して大賞に選んだ作品です。
 T とても嬉しかったです。選んで下さり、ありがとうございました。
個人的な事なのですが、ちょうど母が亡くなってすぐの事で落ち込んでいたので、とても励みになりました。
 
V そうでしたか。戸野塚さんの作品は、受賞作を含めて、視覚的に痛みを伴うものが多いですが、以前からこのような表現を行っていたのでしょうか。
T   昔は、自分の中の感情で不安が非常に大きな位置を占めていたので、痛みに気づくことがあまりなかったのですが、最近この痛みを表現したいと思う事が増えてきました。
 
私自身が実際に不安で苦しい状態を抱えていて、心の痛みや寂しさに耐えきれない事もあるのですが、
その状態が続くと、逆にそれらが心に寄り添ってくれるような感覚を覚える瞬間があります。
 
V 今回の個展のタイトルの『優しい苦痛』はそのようなイメージにつながっているのですね。
T 苦しい事や、生きづらさ、居心地の悪さに優しく寄り添えるようなイメージで、このタイトルを付けました。
 
V 作品内では、赤ちゃんが死に近い状態、または死が訪れた状態で描かれることが多いですが、作品内に描かれている赤ちゃんは、戸野塚さん自身でもあるという事でしょうか。

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T そうですね、そうであり、そうでもないとも言えます。自分を投影している部分もあるのですが、どこか心の中では線引きしている部分もあって、基本的には普遍的な存在として描いている感じです。
私は子供が非常に好きなのですが、だからこそ子供や赤ちゃんの苦しみは苦痛の表現に適しているのではと考えました。
 
V 絵を描き始めたのはいつ頃からでしょうか。
T 油彩を始めたのは、高校の頃からです。自分が苦しい状態の時でも、絵の世界なら何でもできてしまう。
ただ、その頃は自分が何を描きたいのか、真正面から向き合う事はあまりしていなくて、女の子とかを漠然と描いていました。
大学三年生の時に、ドローイングの課題が出て、イメージの羅列を描いた時から段々と作風が変化していきました。
 
V そして現在のような作品を描くようになったのですね。
死のイメージや痛みのイメージがぶれないですが、そのモチーフを描き続けるのは何か理由があるのでしょうか。
T これは自分自身の体験の一部でしかないのですが、先ほど話した通り、昨年の十月に母が、そして今年の三月に祖父が亡くなりました。
特に母は生前色々とあり、離れて暮らしていたのですが、ずっと病と闘っていて、生きるのに非常に苦しい思いをしていたようです。
母が亡くなった時に、私はやっと母はその苦しい思いの中から解放されたのだなと感じました。
 
その直後はどうしてもその姿が頭から離れなくて、骨や死体ばかりを描いていた時期もありましたが…。
自分自身も含めて、苦しみはいつか終わる、その先には死が待っていてもそれが希望になりうることもある。
悲しいだけではない、新しい始まりでもある。ただ単に死への希望ではなく、マイナスイメージの感情と寄り添っていく道もある、そういった思いを絵に託しています。
 

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V 確かに死と言っても、様々な形がありますよね。
T そうですね。身体機能が停止するだけが死ではなく、精神の死という事もありますよね。
私も中学生の頃なのですが、いじめられていた時期があり、家族も不仲で、記憶がごっそり抜け落ちている期間があって、その間の事を全く覚えていなくて、その期間の後から、家族や当時の担任に人格が変わったと言われた事がありました。
その時に、私は一度そこで形式的な死を迎えたのではと今は思うようになりました。
昔の自分が一度そこで無くなっても、絶望だけではなくて、新しい何かが自分に訪れるような感覚を覚えたからです。
 
よく、過激でグロテスクな絵を描くと言われるのですが、伝えたいことの本質は、孤独や苦しみに寄り添いたいという気持ちです。
会期中は会場におりますので、是非一度作品を見ていただければと思っています。(2017.8月24日)

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'17/8/22 〜 9/3戸野塚はづき展「優しい苦痛」
2011年より毎年開催する公募「第5回ヴァニラ画廊大賞」にて大賞を受賞した戸野塚はづきは、生きる苦しみと死による解放をテーマに制作を続けてきました。
「喪失や孤独など、様々な苦しみや痛みを美しいものとして昇華、肯定し、解放されるその時まで寄り添いたい」と語る彼女は、仄暗い物語性を含ませながら、真正面から人間の生と死の本質を掴もうと模索してきました。
受賞後初個展となる「優しい苦痛」では大作となる新作も発表し、無情な世界に幽かに映る希望の祈りのかたちを捉えます。
これからの活躍に期待が高まる新たな才能の開花を是非ご高覧下さい。
 
 
戸野塚はづき
生きる苦しみと解放をテーマに、赤ん坊を主なモチーフとして油絵作品を制作。

与偶人形作品展「フルケロイド ~FULLKELOID DOLLS~」与偶インタビュー

救いようのない感情から産み堕とされる、
心の幼きを止められた人形たち…

 

ヴァニラ画廊では、現在与偶の人形展を開催中です。

「人形作品」と一言で言っても、壊れそうなほど繊細なものから、粗削りでも存在感のある作品まで、その姿形は様々です。

その中で与偶さんの制作する人形作品は異質とも言っていいほど特徴的な姿をしています。

大きく引き攣れたような手足の指先、見開いた大きな瞳は、片方が閉じられ血の涙を流していますが、それらは、なぜだか痛々しくはなく、強い意思を持って立ち上がっているように見えます。

13年ぶりの個展となる与偶さんに、今回の展示に付いて、お話を伺いました。

 

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ヴァニラ画廊(以下V)今回のメインの作品は両目を開けていますね。
与偶(以下Y)この作品は大型の球体関節人形としては、一番新しい作品です。私が作る人形の両目は、それを作っている時点の自分の精神状態によって、開けるのか、伏せるのかが自然と決まります。私は人形を制作する際に下絵などは特に描かないので、このときも無意識的に両目を開けさせたんですね。

昔の作品は片眼をつむっている作品が多いですが、これは外界からの抑圧につぶされて、内面を見つめるために片目をとじているのです。もう片方の開いた目は、そんな悪い状況であっても戦うために、現実に目線を向けているのです。

こう片方の眼で、じっと物事を見ていて、片方はもう見ていられなくてつむってしまった状態。そのつむってしまった片方の眼からはダメージを受けて血が流れているんです。これは自分の身体に傷をつけ、溢れ出た血を直接筆に浸けたもので描いています。完成型では見えない部分、球体関節人形のがらんどうの各パーツの内側にも、自分の血を塗り込んでいる作品もあります。

人形の目…視線を第一に強調したいので、新たな一体を作り始める時も、先ず目の周辺から作り始めます。眼球は頭部を造形するときに最初に粘土に埋めてしまうんです。目の表情が決まると、人形の全体像がおのずと見えてくる。目と表情が先ず出来てから、全身像を作り上げていくのが私のやり方です。

 

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V 与偶さんの作品は歯もとても特徴的ですね。
Y 普通の歯ではないんですよね、こう、牙のような…食いしばるような、何か切り裂くものを持たせる意味合いです。
最新作の子はその牙の代わりにハサミを持たせています。

今回の個展は、私が高校生の時分に一番初めに制作した球体関節人形も展示しているのですが、その頃はネットの記事で読み知った通り、原寸大の下図を描いてから、発泡スチロールを一回り小さく削り出し、そこに石粉粘土を薄く盛って作っていますから、非常に軽量です。
最近は、発泡スチロールを芯にはしていても、直感的に盛り削って、途中でフォルムを大きく変えたりもするので、粘土の厚みが増して、かなり重たい人形になっていますね。

 

V 球体関節人形作品と一緒に、フィギュア作品も今回多く出品いただいております。
Y フィギュア作品もまず初めに顔を作ってから全体を造形していきます。オーブンで熱硬化させる樹脂粘土で制作しているのですが、自宅にオーブンが無かったときは、代わりに髪を乾かすために使うドライヤーの熱を当てるという自己流のやり方で作っていました。

V 与偶さんにとって球体関節人形と、フィギュア作品はどう作り分けているのですか?
Y フィギュアは私の内面のおとぎばなしの断片で作られています。周辺までストーリーを作り込みたいので、背景やベースも作っています。

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 V 今回の展覧会タイトル・作品集のタイトルになった「フルケロイド ~FULLKELOID DOLLS~」にはどういった意味が込められているのでしょうか。

Y 「ケロイド」とは傷ついた証であり、ケロイド状態になっているということは、その傷が塞がって医療的、外科的には治ったとしても、痕跡と心の傷は消えずに残っているわけです。
私はその苦痛を背負いながら生きていく、生き抜いていく、たとえ、心と身体のすべてがケロイドで覆われていても…と言う意味合いの造語が「フルケロイド」なのです。

 

V 最後に、与偶さんに、今回の個展について、お客様に伝えたいメッセージを入れていただければと思っております。
Y たとえ晴れることのない暗闇の中の世界に生きていても、暗闇からでも得られる自分自身のおとぎ話を心のよりどころにしてほしい。死に魅せられていても、様々なものから抑圧されても、抗う人形、戦い続る人形、生き続ける人形…「フルケロイド・ドールズ」という名の、命の塊を感じてください。
(2017.8.12)

 

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今回の個展では、インタビューに登場した高校時代の初めて製作した球体関節人形から、最新作まで、作りためてきた52作品が並び、サイン入りの作品集の販売もございます。
会期は今週20日(日)まで、この貴重な展覧会をどうぞお見逃しなく。

 

与偶 人形作品展「フルケロイド ~FULLKELOID DOLLS~」
http://www.vanilla-gallery.com/archives/2017/20170808a.html

2017年8月8日(火)~8月20日(日)
営業時間・月曜日~金曜日12:00~19:00
土日祝、最終日:12:00~17:00
※日曜日も営業いたします。

入場料500円


Yogu Doll Works Exhibition "Full Keloid ~ FULLKELOID DOLLS ~"
Dates - August 8 (Tue) - August 20 (Sun) in 2017
Business hours · Monday - Friday 12: 00 ~ 19: 00
Saturday, Sunday and public holidays, last day: 12: 00 ~ 17: 00
※ We will open on Sunday.

 

 

 

髙橋美貴個展「Limbo-辺獄-」インタビュー

髙橋美貴個展「Limbo-辺獄-」特別インタビュー

 2017/07/20~8/6の期間で個展を開催中の髙橋さんは、長年ゲームクリエーターとして活躍してきた確かな技術力と、卓越したイマジネーションで、心的現実と世界の中を揺らぎながらも、永遠の静寂と忘却のかたちを描き出してきました。

その創作に関して、髙橋さんにお話を伺いました。

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ヴァニラ画廊(以下:V) 今回初めての個展という事で、先日会場にご家族の皆様がお見えになっていた際に、昔からこういったものを描いていたとお伺いいたしました。

髙橋美貴(以下:T) こういったもの…笑  物心が付いたころから、絵を描いていた記憶はあるのですが、描いているものは全く意識していなくて、幼い頃は普通に漫画やアニメ等を真似して描いていました。今でもメーテルは何も見なくても描けます。笑

ただ、小学生の頃自宅の隣が本屋さんでよく通っていて、礼儀的に立ち読みはできなかったので、おこづかいを握りしめて、漫画の単行本の表紙を真剣に吟味して選んだのが魔夜峰央先生の『ラシャーヌ!』でした。

魔夜峰央先生の絵に心惹かれるものがあったのだと思います。『ラシャーヌ!』もその後に買った『パタリロ!』も怪奇ものではなかったのですが、たしか『ラシャーヌ!』の巻末に『二口女』が載っていて、それにすごく惹かれたのも覚えています。

 

V 数ある単行本の中から魔夜峰央先生を選ぶという、審美眼!

髙橋さんの原点がそこにあるのかもしれませんね。

その後、高校から美術を専攻されたという事ですが、本格的に美術を学ぼうと思ったのは何かきっかけがあったのでしょうか。

 T 祖父が彫刻家で(注1)、一緒に住んでいた頃は自宅にアトリエがあり、毎週一緒に日曜美術館を見て、祖父が読み終わった芸術新潮等を読んでいました。

その影響で、当たり前のように自分の進学する道は美術だと思っていました。

今は閉校してしまったのですが、都立芸術高校に入学し、当時は日本画を専攻したいと思っていたのですが、祖父から美術を職業にする難しさをアドバイスされ、デザイン科に進むことになりました。

実際、デザイン科では色々な事を教えてくれ、油彩から彫刻まで幅広く学ぶことができました。

 

 

V その後は武蔵野美術大学のデザイン科に進学されたのですね。

 T やはり高校時代に学んだことを中心に、その上でデザインや広告の分野にも強く関心を持っていました。同時にCGの面白さにも触れ、引き続きデザイン科を選びました。

アルバイトではデザイン事務所でMacを使える所を選んだり、新しい技術を色々と学びました。

大学では、多少ですが、映像制作なども行っていて、その中で色々とダークテイストなものを制作していました。

当時マックス・エルンストの『百頭女』に影響を受けて、そういったモチーフのコラージュを制作して動かしていました。

 

V モチーフの選び方が、実に高橋さんらしいですね!

T 暗いものを…笑

実際、アングラ系の同級生がすごく気に入ってくれて、その映像作品は最終的にはドイツの映画祭まで旅立っていきました。

 

V その映像作品は是非拝見したいです!

 その後はゲームクリエイターとして就職し、様々なゲームの制作に関わってきたとの事ですが、いわゆるダークテイストなものが多かったのでしょうか。

 T いや、仕事なので、ダークテイストのみという事はまるでなく、様々なジャンルを制作していました。

ホラーをやりたいというこだわりはまるでなくて、『サイレン』に関わったのも、たまたま自分のスケジュールが空いていて、ホラーゲームを作っているチームの仕事に関わったという形です。

ただ、幸運なことに、一番初めに描いた屍人が、ディレクターの求めていたものだったという話です。

 

V 屍人は本当に恐ろしかったです。全世界にトラウマを残した作品だと思います…。

当時はお仕事と作品制作を共にやっていた形でしょうか。

 T いや、社会人になってからはオリジナルなものを作って発表するという事はしていなかったです。

特に『サイレン』を制作していた時は、そこで自分の表現としては満足してしまった部分があるのかもしれません。

ただ、その後の仕事でホラー的な要素のあるものがあまり無く、何となく寂しい気持ちになって、漠然と絵を描いてみようかなと思いました。

 

V オリジナル作品は当初CGで描いていたのですね。

T そうですね。仕事でCGを使用していたので、その流れでCGで描いていました。ただ、展覧会などに出品する際に、どうしてもアナログで描いた作品の方に力強さを感じてしまいました。

 

V そこから鉛筆で制作を始めたという形でしょうか。

T アナログで描く際に、当時一番使っていたのが鉛筆だったので使いやすいということと、気軽に構えずに描けたという事から使っていました。

 

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                     「夜明け前」鉛筆画

 

 

そしてその後、日本画を習い始めました。

高校のデザイン科で唯一授業が無かったのが日本画で、どういう絵を描いていこうかと振り返った時に、自分が影響を受けていたのは日本画が多かったからです。

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            「私は何処へも行ける」絹本着色 黒箔

 

 

V 実際にどういった作家に影響を受けていたのでしょうか。

T 竹内 栖鳳や、甲斐庄 楠音には強く影響を受けました。先ほどお話したのですが、祖父と一緒に見ていた日曜美術館の甲斐庄特集の時には、何だこの画家は!って。笑

 

V 今回の個展では、CG作品から鉛筆画、そして日本画まで多彩な作品が揃っていますが、根底にあるテーマは一貫していて、甲斐庄 楠音の根底にある澱のようなものと、髙橋さんの作品には何か通じるものがあるように思います。

 

T 何かしらずっと頭の中にある場所を描いている感じです。

今回リリースでメインに使用した「辺獄₋Linbo-」も、こういった場所に揺蕩って、こういう景色を見ているイメージがずっと頭の中にありました。

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                            「辺獄₋Linbo-」鉛筆画

 

V これはこの巨大な頭の持ち主の視線から見ているような感覚でしょうか、それともこの不思議な光景を外から見ているようなイメージでしょうか。

T 不思議なことにどちらの目線もある感じです。

個展を開催するにあたって、自分はずっとこの世じゃないもの、でも天国でも地獄でもなく、罪や救いがある神様がいる世界ではなく、誰からも裁かれない心地が良い自由な空間を描きたかった。

 

V よく髙橋さんの作品は死のイメージやダークなモチーフが多いイメージがありますが、それがネガティブな形ではなくなぜか心地よく、不思議なことに恍惚さえ感じますが、今のお話を伺い、合点がいきました。

 T 明るい、暗いという事ではなく、清濁全てが混ざり合って溶けていくような、境界線を越える表現を今後も続けていきたいと思っています。

(2017年7月21日)

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注1髙橋美貴さんの祖父は、彫刻家の赤堀信平氏

 

 

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                「朝、雷鳴」Photoshop

 

www.vanilla-gallery.com

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髙橋美貴プロフィール

東京都生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒。
ソニーインタラクティブエンタテインメントにアーティストとして在籍。
日本を舞台にしたホラーゲームシリーズで屍人・闇人のデザインに携わる。
2014年よりオリジナル作品の発表を開始。同年Behance Wacom賞受賞。
2016年 ヴァニラ画廊大賞展参加、幽霊画廊Ⅲなど