ヴァニラ画報

ヴァニラ画廊 展示やイベント、物販情報などを随時発信していきます。

展覧会特別トークショー カネコアツシ×寺田克也


11月24日展覧会特別トーク 
カネコアツシ寺田克也

 

展覧会2日目に開催された特別イベントでは、ゲストにカネコさんの漫画をデビュー作から知る寺田克也さんをお招きし、漫画について、絵について、画材やデジタル作画について、旧知の仲のお二人ならではの興味深いトークを始め、お客様からの質問タイムの時間などなど、充実のトークイベントとなりました。

その中で少しではありますが、お二方のトークの一部分をお届けします。

カネコアツシ展の導入として、そして鑑賞後の復習としてもお楽しみください。

 

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寺田(以下寺):俺がカネコアツシを初めて知ったのは、この一番最初の『ロックンロール以外は全部、嘘。』からなんですよ。ここに展示してありますけど。

 

カネコ(以下カ):その頃から?

 

寺:最初に雑誌で見て、単行本も買って。これは面白い人が出てきたなって。でもカネコ君はこれを言うとすごく嫌な顔するんですよ。

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カ:あれ見ちゃったのか〜って感じです。笑

 

寺:今回トークショーにあたって、『BAMBi』『SOIL』『Wet Moon』『デスコ』と全て30インチの大きな画面で読み返して見ようと思って、全部電子書籍大人買いしたのはいいものの、『BAMBi』の1巻しか読めませんでした。笑

そしたら、1巻目の1話がですね、そんなに上手くない。で、あれ?と思って。俺のイメージの中では「超上手い漫画家」カネコアツシだったんだけれど。あれあれ?と思って、でも、もう2話目から上手いんですよ。だからあれは1話目と2話目の間に何があったんだろうと思って。雷にでも打たれたんですか?笑

明らかに2話、3話目から線が慣れてきていて、1話目は相当緊張していたのかなって。

 

カ:多分なんですけど、筆ペンの使い方がよくわかっていなかったのかな?

 

寺:あれが最初の筆ペン?

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カ:それより前に『B.Q.』を筆ペンで描いてはいるんですけど、多分連載の一番最初なので、これでいいのかな?って迷いがきっとあったんだろうと思います。主人公が全面に出ていて、それも女の子がドンパチするような話って描いた事が無かったし、でもただ何となく行けそうな気がするという状態で始めたんです。

まだキャラも固まっていなかったり、そう言われると色々あったのかな…。こういった漫画らしい漫画を描くのが初めてだったので、自分の中で抵抗もあったのかもしれないですね。

寺:『BAMBi』でメキメキ上手くなって。カネコ君の持つ絵の巧さとストーリーの巧さが上手く回りだした感じで、やっぱり面白い作家だなと思っていたら、その後に描くものも、どんどん変わっていって。

 

カ:筆ペンに変えてから、自分がどんな絵を描きたいのか、どんな話が作りたいのかというのが、ちょうど同じ時期に見えてきたような感じがします。

それまでは本当に何描いていいのかわからなかったんです。漫画家になった、でも何を描いたらいいんだろうってずっと迷いながらという感じでした。

 

寺:でも道具に引っ張られるのはあるよね。

 

カ:そうですね。ちょうどこういう『BAMBi』のような無国籍感を出したい時に、筆ペンのこの線があって何とか様になったような気がしました。

 

寺:すごくグラフィカルでね。この線あってのカネコアツシという感じがこの時期はすごくします

 

カ:ロウブロウアートとか、アメリカンな感じが好きだったんですけど、それと漫画は違うものという意識はあって、でも吹っ切れてそのまま描いちゃえばいいじゃんと思って。

 

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デジタルについてーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

寺:今はフルデジタルですよね。

 

カ:まず何でデジタルにしたかっていうと、寺田さんがFacebookiPadいいよってお勧めしていて。笑

Wet Moon』の頃から、ベタ塗りなんかの仕上げはデジタルで描いていたのですが、その後、液タブに行こうかどうしようか迷っている時期がありました。一番ネックだったのはとても大きい感じがしたんです。

 

寺:大きいから縛り付けられる感じはありますよね。

 

カ:その頃丁度、AppleStoreで、iPadを試して、これだ!と思って。

 

寺:購入から実際の導入までかなり早かったよね。

 

カ:思いついたらすぐ使ってみたくて。

 

寺:実際あのスピードで現場の仕事に持ち込める人は、あまり見たことがなくて、それだけ相性が良かったのだなと思いました。

 

カ:ただ1ヶ月くらいはアナログで描きながら、デジタルを練習をしていました。単行本の途中で絵が変わるのも嫌だったので、単行本の切れ目まで待ってデスコの6巻から変えました。目が疲れるとか単純なデメリットはありますが、僕には合っていたのかなと。

後、『デスコ』という作品の性質上、黒の表現が多かったので、黒の画面の上から白で描けるというのは表現の幅が広がりました。

 

寺:やっぱり白を残すのと、白で描くというのとは全然違いますからね。

 

カ:そうですね。すごく自由になったような感じがありました。寺田さんはiPad前と後とで大きく変わったことはありますか?

 

寺:違いはやはりあると思います。同じ画材ではないですからね。塗りなんかには如実に違いが出てるような気はしますが、最近は線に回帰している部分があって、前みたいに濃く塗ることをあんまりやっていない。この展示してある『Wet Moon』の表紙のような、線に対してぱきっとした色を使うのが、線の活かした一番の色面の使い方かなと思って。自分の中で色をタッチで入れていく描き方と、線の同居のさせ方がまだ完成されていないので、今はそれでいいやと思って線画を主体でやっていますが、またそれはおいおい変わってくるだろうなと思っています。

でもカネコ君と一緒で、道具としての軽やかさが、すごくいい影響をもたらしたと思っています。どこでも仕事できるしね。元々海外に出かけることが多かったので、一緒に持っていってそのまま仕事するというのが前より楽になりました。前は17インチのマックブックと小さいタブレットを持って行っていたんですが、機動性が明らかに変わってきました。それが自分に対しては大きなアドバンテージになっています。

 

カ:寺田さんも液タブはダメだった?

 

寺:うーんそうですね。カネコ君と同じ感覚だと思うんだけど、なぜか液タブには心が惹かれず…板タブの方が自由度が高くて。

 

カ:なんでだろう。

 

寺:さっぱりわからないですねえ。笑

 

カ:レスポンスは?

 

寺:レスポンスは言うほど気にはなっていなくて、どんな道具でも慣れるから、何か月かやってみて、自分で歩み寄ってみれば大体OKかなとは思っています。それしか無ければそれを使うけど、実際は使わなかったっていうのは、自分の中でどこか道具として重いんだと思ってしまったのかもしれません。スピードが遅いという意味では無くね。できるだけ軽やかなものが欲しかった。だからiPad proにpencilが出てきたときは、これはもういけると。

ただその前に3年くらい指でProcreateは散々使っていたので。最初は指で描いていてあまりピンとこなかったんですけどね。

 

カ:この人、指で描くんですよ!iPod touchの頃から、酒飲んでても描いてた。で、気が付くと凄い絵が出来上がってるんです。皆が飲んでる間に、こうやって修練を重ねているんだなって。笑

 

寺:なんかそれ病気みたいじゃん。笑 

でも感覚としては煙草吸ってるようなね、やっぱりアディクトなんでしょうね。

 

カ:本当、何してる時も描いているんですよ。このトークショーの前もここに来る途中の電車の中でデスコ描いてくれたり。

 

寺:もう出すの?話に詰まったら出そうと思っていたんだけど。笑

 

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寺:このデスコの「ばああああ」が好きでね。可愛いんですよ。

 

カ:可愛いでしょう?笑

話は戻りますが、そう常に描いているっているのは…

 

寺:でも漫画家の人に比べれば全然描いていないですよ。漫画家は強制的に描かされるじゃないですか。

 

カ:そう、今回個展をやりませんかと言われて、一番悩んだのは描き下ろしで何描こうという所なんです。

漫画家ってストーリーの為の絵しか描かないので、そのために必要な絵しか描いていないんですよ。描きたい絵を描いているわけでは全くなくて。だから好きに何でも描いていいですよと言われたら、何を描いたらいいかわからない。ノートがあって、電車の中で何を描こうか全然浮かんでこない。

それで寺田さんに相談したら、漫画家なんだから、漫画の大きなコマを描くような気持ちで描けばいいんじゃないと言われて。

キャラクターっていう自分の作った財産があるんだから、そういう絵を描けばいいんじゃないかと。もう目から鱗がボロボロ落ちました。

 

寺:落ちてたね。笑

いや、別に大層な事を言ったのではなくて、やっぱりそういう罠に引っかかる漫画家の展覧会は以外に多くて、大きなものを描こうとして。基本的には原稿用紙サイズにペンの比率で線を引くという作業をずっとされている方たちなので、突然大きな絵を描こうとすると、画角に対してどういう比率で線を引いたらいいかわからなくなる。だったらずっと描いてきていたコマを拡大する方がずっと力があるから。やっぱり漫画のコマの迫力は締め切りまでの勢いっていうのもあるのだけれど、その勢いにはかなわないところがあるから。

だから本当に漫画の中のコマを抜いて、でかくシルクスクリーンで引き伸ばせば?なんて話を適当にした気がします。

 

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カ:でもそれがすごく腑に落ちて、一枚のコマを描くような形で描いてみようと。急に無理して真似事をしてみても、それは真似事なので、やはりやっている事に連続性がないといけないなと思いました。今まで通りやってみようと。

漫画の媒体でも今までやってないことをやってみようとか、これは勝負がかかっているぞという局面って、大体冒険したくなるんですけど、そういう時こそいつも通りにやっている事をやらなくちゃいけないなと思います。

 

寺:そうですよ。それでいいんじゃないですか。

 

カ:何だか投げやり。笑

 

作品のテーマについてーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

カ:あと考えていたのは、展示する為に480枚の原稿をチョイスしていて、ふと今までどのくらい描いたんだって考えてみてね、単行本だけでざっと考えてみたら9000枚描いているんですよ。でも自分は月刊連載しかしていなくて9000枚だから、週刊連載している人はどれだけ描いているんだって。

 

寺:でもカネコ君の場合はほぼ1人で描いているから。週刊の人はアシスタントを使って描かざるを得ないわけだけど。だから1人で25年間描いて、それが9000枚っていう重さと財産な訳で、そして今到達している場所になるわけですよ。

カ:ただ、寺田さんは俺の1京倍くらい描いているから…

寺:1京倍って中学生みたいなことを…笑

でも目的なく描くものはそれなりのものでしかないから。結局漫画は描きたくないコマを描かなくてはいけないからね、それが8割あって成立するものだから、俺みたいに飽き性の人には辛い作業なんですよね。

カネコ 寺田さんは漫画も1枚絵も両方描きますからね。漫画を描いているとチャンネルが変わるという事があるんでしょうか。

 

寺:変わらざるを得ないっていうのはありますね。描かされている絵になりますよね。描きたくもない郵便ポストを描かなくてはいけないし。

 

カ:描きたくもない電柱とかね…笑

寺:そう。で、どうそれから逃げようかって。でも逃げているとバレバレで、ああ!もうここ描かなくちゃって嫌々背景を描くっていうね。

そうなるともう1枚絵が描きたくてしょうがなくなるんだけど、1枚絵ばかり描いていると自分の描きたいものしか描かないから広がりがなくて、その広がりの中に自分はいつも対峙しなくてはいけないんですよね

カ:1枚絵になると、寺田さんは1つのモチーフを連続して描く事があるじゃないですか。エロメカガールとか。そこでやはり繋がりを持って完成度を高めていくという感じなのでしょうか。

 

寺:完成度だけ追っていくとタコ壺化していきますからね。自分が見たことないものになれば良いなと思って描いているけど、もちろん中々ならなくて。でも何かのはずみで奇跡のようなことが起こる事があるから、そうすると新しい角度が手に入ったなと思う。でもそれは奇跡であって、また同じ事はできないので。

それでも自分のテーマだからね。観る人にはそれほど関係なくて、自分のテーマを描くと同時に、見る人に面白がられるにはどう描けばいいだろうという2本柱があって、その気持ちは漫画描いている時と1枚絵を描いている時と気持ちは変わらないですね。

 

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カ:同じモチーフを追求していくっていうのは、無意識の方に期待している?

 

寺:それはある。自分も変わっていくでしょ。年取って若い時には持っていない視点とか知識とか、そういったものは絶対反映していくので。そこに自分の培ってきたものが反映されればいいなと思っているから、毎日が勝負みたいなところはありますよね。それはモノ作る人は皆そうなんじゃないかな。

でも作家が同じテーマを描き続けるのは当たり前のことで、漫画もそうだろうし。表面上が違うだけで、本質的な所は変わらないですよ。

 

カ:僕も自分では色々な漫画を描いていて、結局アプローチは違うけど同じものを描いているという所があって。最近気が付いたのは「コントロールできないもの」が描きたいんだなって。

『BAMBi』はわかりやすく主人公自体がコントロールできない存在だし、『SOIL』は全てにコントロールが効かなくなってくる。コントロールできない「世界」ですね。

 

寺:『SOIL』は絵すらコントロールできない描き込み様ですからね。

 

カ:あれは自分が描いたものではないような所があって、ストーリーの必要性に迫られて描かされている感じでした。

 

寺:そうでしょうね。あの絵になっちゃっているんだろうなと読みながらずっと思っていました。細かくしようとして細かく描いているんじゃないんだこれはって。

 

カ:ストーリーに引っ張られて、ストーリーに沿うような絵になっていきました。

 

寺:技術的にもそこにいったからあれが描けた感じですね。

 

カ:7年半かけてやっていたので、色々準備してきたものが後半やっと走り出して、それに引っ張られて描いたんだなと。今こうやって展示で見返してみると自分でもぞっとするような所はあります。

塩まみれの街を描きたくて漫画家になったわけじゃない…でも塩まみれという展開を考えてしまった以上、俺は塩まみれの街を描かなくてはいけないという。笑

 

寺:当時カネコ君は、裸で塩まみれで描いてたって噂が…笑

Wet Moon』や『デスコ』はあえてそこからシンプルな線に戻してますよね。そこらへんは何かあったの?怖くなったの?笑

 

カ:ちょとやりすぎたかなと。『デスコ』は白黒の美しさを描きたいと思ってあえてシンプルな線で描くようにしていたんですけど、iPad導入した時期からまた細かく描くようになってしまって、印刷されたものを見てこれはいかんと軌道修正しました。

 

寺:ほとんどの漫画家はデジタルを導入すると、拡大できるから線が細かくなっていって描き込みが増えるんですよ。最初はどうしてもそれをやっちゃうんですよね。

ただ道具は道具で便利な方に寄って行くんだけど、道具に依存はしたくないから、どっかでいつでもアナログに戻れるという思いがあった方が、道具と距離を置けるのでいいですよね。

 

カ:そうですね。たまにはやんなきゃなって思います。展示用のベタ塗りは辛かったですけどね。こんなに地道な作業をしてたのかって。ここに展示してある『Wet Moon』は、仕上げはデジタルでやっていたので、展示用にベタ塗りをやり直しました。

先程の話に戻ると、『Wet Moon』は自分が一番信用できなくて、コントロールできない「自分」。でも『Wet Moon』は日本ではあまり人気が無くて…

 

 
寺:でもフランスでは大人気じゃないですか。漫画を読む層が向こうは広いし、読み方も全く違いますしね。
 
カ:だから、反動で表向きはエンタテイメントの単純なストーリーの中に、同じように余白を作って抒情的な話ができるんじゃないかと思って、作ったのが『デスコ』だったんです。『デスコ』も、コントロールできない「運命」をこういう形で描いたんだなと。
読む人はエンタメだから楽しんで読んでもくれるし、深く考えてくれる人は考えてくれる。
 
寺:カネコアツシ、成長し続けているじゃないですか!作品ごとにテーマをね、きちんと設定して作れるのは凄い事ですよ。
 
カ:途中から気付くんですけどね。笑 最初から俺は「運命」を描くんだ!ではなく、デスこというキャラクターがいて、殺しの話を描こうとぼんやり思っていて、それがどういう形の話かと考えると、あ、俺はこれが描きたいんだと。
 
寺:大体の漫画家はそうですよね。最初はキャラクターがカッコイイと思って、キャラクターをチョイスするけど、実はキャラクターをチョイスする時点でその人物が生きようとする世界を描こうとしてることになるから。それ自体は作家が単純な事を考えていない限りは、単純なものになりえないですよ。どうしたってキャラクターが動けば動くほど、その世界の複雑さが顕著になっていきますよね。

 

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寺:『デスコ』はもう描き切った?もう少し見たいんだけど。もちろんこれはファンの意見ですけどね。

 

カ:もう少し描きたいエピソードは残ってたんですけどね。

 

寺:『SOIL』や『Wet Moon』と違って、『BAMBi』や『デスコ』はね。やっぱりキャラクターを描いてしまうと、どうしても愛してしまうからね。

 

カ:『BAMBi』の後に『BAMBi零』を描いて、これいくらでも描けるなと思ったんですよね。で、キャラクターに惚れこんで夢中になったくらいで終わるくらいがちょうどいいのかなって。

 

寺:一番愛してる時に別れるのが一番いいのかもね。

 

カ:それ以上描くと、キャラクターを愛しすぎるから話がつまんなくなっちゃう部分はあるんですよね。

BAMBiの時もちょうどいいくらいで終わってくれたと思いました。テンションがマックスの時に終わる感じですね。

 

寺:美学ですね。カネコ美学。

 

カ:だから今回久しぶりにバンビを描き下ろしで描いて、ずっと自分の中にいる人みたいで嬉しかったです。

 

そもそもなぜ漫画家に?ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

寺:そもそもなぜ漫画家という選択を?

 

カ:結構色々な所で言ってるので、今更ながらなんですが、大学の卒業見込みが出なかったからです。

 

寺:なるほど。それは21くらい?

 

カ:そうですね。単位が足りなくて、卒業見込みが出ないから就職活動ができなくて、さあ俺はこれからどうやって生きていこうかと思った時に、最初は映画が好きだから映画の世界にと思っていたんですけど、日本の映画の世界は保守的に見えて…

 

寺:ディスりが入ってきました。笑

 

カ:かつてはね、…映画業界の事を色々聞いたものだから、それは嫌だなと思って、そういえば小学生の頃に漫画描いた事あったなと。絵も好きだし、お話考えるのも好きだし、漫画だと。

 

寺:でも小学生の頃でしょ?どんなの描いていたの?

 

カ:ギャグマンガですよ、よく小学生が描くやつ。

 

寺:それ受けてた?

 

カ:俺より売れっ子の作家がいましたね。笑

 

寺:あ、やっぱり。俺もいました。そいつがいると自分のつまんなさがどんどん引き立っちゃうんだよね。

 

カ:そいつにはコンプレックスを抱きまくりでしたね。

 

寺:俺も俺も。

 

カ:自分はギャグマンガなんですけど、そいつの描くものは狂気なんですよ。もうすでに。笑

 

寺:いるいる。ただ、そういうやつは続けないんだよね。軽くそういうのを飛び越える奴は、普通にサラリーマンやってたりする。話を戻しましょうか。そこから全然描いていなかったのに?

 

カ:そうですね。自宅で寝転がってて、そうだ漫画家になろうって。

 

寺:漫画みたいですね。笑 原稿用紙を買ってきて?

 

カ:まず一番初めにしたのは「漫画の描き方」っていう本を買ってきて。

 

寺:そこから?笑 でもやっぱりちゃんと始めちゃう人はいつだって凄い。ここに展示しているデビュー作は描き始めてから何本目の作品なの

 

カ:4本目くらいかな?最初に新人賞に送って、佳作かなんかをとって、よし俺は漫画家だと。でもその後も持ち込みをするんですけど、全然ダメ。賞は取れるんだけど、ネームを持っていくと全然ダメ。要するに編集さんとの相性があって、持って行ったものはダメだったけど、話をして「ロックンロール以外は~」の話をしたら即採用になって…

 

寺:仕事は最初は自分では選べないからね。でもこれ4本目にしてはね、最初にも言いましたけど、俺は当時これを読んで、この人は相当うまくなるって思いましたよ、偉そうな言い方しましたけど。
明らかにもっと描くとうまくなるっていう絵だから、描いているものが逃げていないし。描けないものから逃げる作家の感じはわかるから。でもこの人は全部のコマをストーリーに合わせて描いてるって。
 
カ:漫画の描き方を知らなくて、技法に逃げられなかったというのがあるんです。学ぶのを拒否していたっていうのもあったのかもしれないですね。自分なりに煙の表現とか炎の表現とかを模索して描くから時間もかかるし…
 
寺:それが今のカネコアツシカネコアツシ足らしめているわけですよ。今回初めての個展にあたって、昔の原稿を見返してどうでした?
 
カ:改めてみると描かされた感が強いから、よくこれ描いたなと思いました。特にどの漫画もストーリーの後半部分は、よく描いたなと。漫画だから、漫画だからこそ、この絵が描けたんだなと今では思います。
(2018.11月24日)
 
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展覧会は12月29日(土)まで!

カネコアツシ“初”原画展
Atsushi Kaneko “First” Exhibition「SEARCHANDDESTROY」
2018年11月23日(金・祝)→12月29日(土)展示室AB 会期中無休 入場料500円
https://www.vanilla-gallery.com/archives/2018/20181123ab.html

 

会期中イベントも残り2つ!

★特別イベントライブ原稿描き
※チケットは必要ありません。

12月15日(土)営業中(12:00~17:00)
(カネコ先生が画廊内でお仕事します。ipadでの原稿は会場内のモニタでご覧いただけます。
展覧会も通常通りご覧いただけます。)

★展覧会レセプション
※チケットは必要ありません。

12月23日(日)17:00~19:00
(どなたもご参加いただけます。展覧会も通常通りご覧いただけます。)

 

この度、ヴァニラ画廊では漫画家カネコアツシの初原画展を開催いたします。
カネコはデビュー以来、漫画作品「BAMBi」、「SOIL」、「Wet Moon」、「デスコ」を始めとした、多くの傑作を発表し続け、またイラストレーターとしても活躍しています。
画面の中に緻密に構成された作画は、ダイナミックな構図の中に、バイオレンスとエレガンスを内包するグラフィカルな作風、そして実験的かつエンタテイメント、不条理に彩られ、真理をつくストーリーテリングで国内外の多くの熱狂的なファンを魅了し続けています。
今展示では、デビュー作原画から展覧会の為の描き下ろし最新作まで一挙大公開!
また、アナログ制作からデジタル制作まで、これまで手がけた仕事を俯瞰する展示構成により、その唯一無二の世界観に迫ります。

作品販売(展示物一部)や展覧会グッズ、人形作家によるオマージュ作品も有り!会期中にはトークイベントも開催予定です。
この貴重な機会をどうぞお見逃しなく!

 
カネコアツシ
マンガ家。著作「BAMBi」「SOIL」「Wet Moon」「デスコ」など。
最新作は手塚治虫どろろ」のトリビュート作品「サーチアンドデストロイ」(マイクロマガジン社「テヅコミ」連載)。
イラストレーターとしてもCDジャケットなど数多くの作品を手掛ける。
オムニバス映画「乱歩地獄」の一編「蟲」(原作/江戸川乱歩 主演/浅野忠信)では脚本、監督も務めた。
著作はフランス語、イタリア語、スペイン語、ドイツ語に翻訳され、出版されている。
Wet Moon」フランスBD批評家協会賞2014アジア部門グランプリ受賞。「SOIL」サンマロ文学祭GRAND PRIX DE L’IMAGINAIREマンガ部門グランプリ受賞。アングレーム国際漫画祭2012、2013、2015ノミネート。「デスコ」文化庁メディア芸術祭2015審査委員推薦作品選出。

 

 

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猫将軍展「DUNGEON」作家インタビュー

 

 

独創的でダイナミックな美学で、昆虫、動物、女性、宝石、食物などのモチーフを元に作品を描くイラストレーター猫将軍さん。独自の世界観で国内外から注目を集める猫将軍さんに今回の個展についてお話を伺いました。

 

ヴァニラ画廊(以下、V.)今回関東では初めての個展という事で、タイトルは「DUNGEON(ダンジョン)」と名付けていただいたのですが、このタイトルとコンセプトに決めた経緯はどうしてでしょうか。

 

猫将軍(以下、N.)これは展示する場所にヒントを得たタイトルです。2016年の「虚ろの国のアリス」展で、初めてヴァニラ画廊を訪れた時に、階段を下りた地下にあったので、まさにダンジョンのようでピッタリだと感じました。

 

V.そうでしたか。エレベーターも無い地下で申し訳ないです…涙。

ただ、場所にインスピレーションを受けていただいて派生した作品と考えると、とても嬉しい限りです。

 

 

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V.いつもは創作において、他にどんな形でインスピレーションを受ける事がありますか?

 

N.そうですね。映像からはあまりインスピレーションを受けることが少ないのですが、音楽を聞くとパッと浮かんできたりします。

音楽は洋楽が好きでThe Prodigyというバンドをよく聞いています。

 

 

V.猫将軍さんの作品は1作品ずつストーリー性があるように思うので、ビジュアルではなく、音からというのが面白いです。1作ずつ背景が濃厚に感じられる作品というイメージがあります。

 

 

N.そういったキャラクター性でいうと、まず先にビジュアルが浮かんで、描き込んでいくうちに内面が肉付けされていくというパターンがほとんどです。

 ただ、今回の展示作品である「SLIME(スライム)」は逆に設定から生まれたキャラクターなんです。

身体がスライム状で頭に牙のある骸骨が付いている作品なのですが、最初にスライムが食事する時は、食べる対象を溶かして食べるんだろうけど、それってすごく時間がかかるなと思ったんです。だから、消化しやすいよう先にかみ砕けたらいいんじゃないかという設定からこのキャラクターが生まれました。

 

 

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V.今回は「DUNGEON(ダンジョン)」がテーマという事でクリーチャーや幻獣というモチーフを、猫将軍さんの独自の世界観で描くとこうなるんだなという驚きがありました。

 

N.すごくこだわっている世界観はないんですが、格好つけたいんだけど恰好つけすぎたくないというのがあるかな…。

なので、「ちょっと外す」ということは意識しながら描いています。

「KNIGHT(ナイト)」も甲冑とケーキという普通ならあり得ない組み合わせを一緒にしてある種のバカバカしさを演出することで、格好つけすぎないようにしました。

 

 

V.確かに、甲冑とケーキ…(笑)いや、言葉にすると笑ってしまうんですけれど、でもこの作品を見た時は格好良くて衝撃でした。

猫将軍さんの作品は他にも食べ物がモチーフになっているものが多いですね。

 

 

N.そうですね。私も食べる事が大好きなので、食べ物は“欲の象徴”として描いています

その他にも、“欲の象徴”としては、よく宝石もモチーフに使っています。

 

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V.今回の作品は特に黒が際立っていて、とても特徴的な色合いですね。

作品のカラーリングのこだわりを教えていただければと思います。

 

N.カラーリングについて、モノトーン部分とカラー部分はパキっと分けて、作品全体に色は乗せないようにすることでちょっと不安定な雰囲気を作り出せたらと思っていました。この「MANDRAGORA(マンドラゴラ)」も一見カラフルに見えますが、下のカップ部分は完全にモノトーンにしています。他の作品もそうですが、一種のコラージュのように見せたいという狙いがあるんです。

 

V.確かに実在感がとてもあって、でもどこか不安定でというこの感じは、様々な世界が色々混じりあって生まれているような気がします。

今回の作品は、全て描き下ろしの作品ですが、一番思い入れのある作品はどれでしょうか。

 

N.思い入れはそれぞれありますが、「DRAGON(ドラゴン)」は気に入っています。このダンジョンのラスボスとして描いたので、特に見ていただきたい一枚です。

 

V.この作品のラスボス感は凄いですよね。圧倒的な迫力があって勝てる気がしない…。

 

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V.猫将軍さんはイラストのお仕事を多く手掛けていますが、仕事と個人の創作での心境の違いはありますか。

 

N.仕事はまず期待に応えないといけないというのが常にあります。創作は自分が好きで納得する絵を描けますが、注文されたものと自分の想像したものを描くのはかなり違います。どちらも同じなのは緊張感を持って描かなくてはと思っています。

 

 

V.最後に今後の展望や挑戦したいテーマなど教えてください

 

N.今回の展示自体が新しい試みだった部分はあります。普段は実在の動物や虫を描くことが多かったのでクリーチャーをテーマに展示をするのは初めてなくらいです。

今後も変わらず好きなものを描いていきたいというのが展望です。

 

 

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猫将軍展「DUNGEON」展示WEBページはこちら

'18/2/6 〜 2/18

猫将軍展「DUNGEON」 展示室A

入場料500円(展示室AB共通)

平日12:00~19:00 土日祝12:00~17:00

映画トム・オブ・フィンランド

現在ユーロスペースで開催中のトーキョーノーザンライツフェスティバル 2018にて、フィンランドで制作された「トム・オブ・フィンランド」が上映中です。

非常に思うところがある作品でしたので、自分が忘れない為にも感想を記します。


主人公は1920年フィンランド生まれのTouko Laaksonen、誰もが知るゲイ・エロティック・アートのパイオニアTom of Finlandその人です。
映画は第二次世界大戦中から始まり、テンポよくToukoの暮らすフィンランドの戦後の生活、そしてセクシャリティを弾圧され、それでも描き続けた一人のアーティストの半生をロマンチックに描いています。

 

映画の中で、決してToukoは描くことを止めません。
国から離れ、共有できる仲間を求め、隠し持ってきた絵を盗まれたとしても、何度も何度もスケッチブックを開き鉛筆を走らせます。脳内のイメージをひたすらに描き続ける様は、鉛の柔らかさと紙の質感が相成り、何とも言えない恍惚感に溢れていました。
私たちは、殴られ、拒絶されてなお、あれほどまでに強く価値観を曲げずに(曲げられずに)、粘り強く、自らの思う美しいものを信じた事はあるでしょうか。

美しいと感じる価値基準は、人によって千差万別でありますが、その美意識をぶれることなく自ら信じる事は、救いでもありながら、一方でその事を共有できることが無い限り、実は本当にしんどい事なのだと思います。

でも描かずにはいられない。美しいと信じているものを描かずには生きられない。

 

一方で映画の中では、その作品を受け取る側の姿も描かれます。誰にも話すこともできなかった事を、顔も知らぬどこかの誰かが理解し共鳴してくれる。一枚の絵が心の拠り所になる。この世界のどこかに、自分と同じものを美しいと感じている人がいる。そしてそれを信じて描いている人がいる。

人の価値基準は個人それぞれですが、この通じ合う嬉しさに関しては共有できるものの一つなのではないでしょうか。

布団をかぶって、隠れて大好きな絵を見ているあのシーン、皆様、覚えありますよねえ。ねえ。

その後、Toukoの作品に魅せられた少年は成長し、Toukoの作品を本人の許可を得て発表する機会を作るのです。昔の自分のように、この作品を美しいと感じる世界中の人たちに向けて。


ネタバレになってしまうので、多くは書けませんが、初めての画集を出すシーンで非常に印象的なセリフがあります。全てのものを作る人にとって、これほどまでに心揺さぶる言葉は無いのではないでしょうか。そしてギャラリーでアーティストの展覧会を開催する側にいる自分も、この一言は非常に心にズシンと響くものがありました。

 

Tom of Finlandの作品に描かれる、おなじみの様々なユニフォームや、レザー姿の男性はもちろん、彼の作品に登場するイマジナリーセックスフレンドの官能的な姿など、ビジュアル面でも大変楽しめる作品です。本当はラストシーンでレザーボンデージの男性達と一緒に雄叫びをあげたいくらいでしたが、心の中で静かに拳を突き上げる程度に留めました。涙

ユーロスペースで上映は残り1回。是非多くの方に見ていただきたい映画です。

(ヴァニラ画廊/田口)

 

http://tnlf.jp/
http://www.eurospace.co.jp/

Tom of Finland
監督:ドメ・カルコスキ Dome Karukoski
2017年 / フィンランドスウェーデンデンマーク、ドイツ、アメリカ / フィンランド語(Finnish), ドイツ語(German), 英語(English) / 116分
字幕:日本語・英語【With English subtitles】

 

トム・オブ・フィンランドを日本に紹介して下さり、映画上映後にアフタートークで登壇された田亀源五郎先生も、新刊『ゲイ・カルチャーの未来へ』でトム・オブ・フィンランドファウンデーションとの繋がりについて書かれています。
https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B2%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%81%AE%E6%9C%AA%E6%9D%A5%E3%81%B8-ele-king-books-%E7%94%B0%E4%BA%80-%E6%BA%90%E4%BA%94%E9%83%8E/dp/4907276869/ref=sr_1_5?s=books&ie=UTF8&qid=1518516963&sr=1-5&refinements=p_27%3A%E7%94%B0%E4%BA%80%E6%BA%90%E4%BA%94%E9%83%8E

 

ヴァニラ画廊の近くのBar十誡でも、Tom of Finlandの画集を取り扱っておりますので、お近くにお越しの際には是非。
https://www.zikkai.com/

 

高橋邑木個展「Humanimal」作家インタビュー

人間(Human)と動物(Animal)が融合した新たな生き物を表す造語、それが高橋邑木さん2回目の個展となるタイトルの「Humanimal(ヒューマニマル)」。人体と生物の境界線が曖昧な新たなる世界を、高橋さんは陶磁器で制作します。

「日常に寄り添うアートを創りたい」と、オブジェから花瓶、アクセサリーと様々な作品の制作に取り組む高橋さんに、今回の個展の制作秘話を伺いました。

 

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ヴァニラ画廊(以下、V.)2016年11月に開催した個展「進化≠変化-人体と生物の融合-」から約1年半経ち、今回も全て新作で2度目の個展になります。

中でも壁一面に並んだ陶器の心臓のシリーズは圧巻ですね。

 

高橋邑木(以下、T.)この心臓のシリーズは、前回の個展からの連作となります。今回は爬虫類との融合をテーマに制作しました。中でもイモリやカメレオンなどと心臓の組み合わせなどがご来場いただいた方にご好評いただいております。

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V.焼き物ならではの独特の質感が、爬虫類の質感、深い色合いが織り交じり、大変印象的です。

高橋さんは、いつ頃から動物と人間が融合するスタイルを発表されているのでしょうか。

T.2016年に初めての個展を開催する際、何をテーマに作品を制作すべきかと考えたときに、図鑑などの資料を眺めながら、自分の焼き物のスタイルを、好きな生き物たちに組み合わせたいと思って制作を始めました。

ただ陶器で正確に模倣するのは、他にも様々な作品がありますので、自分の作品として発表する形としては、幼い頃から好きだった解剖学をモチーフに制作を行おうと思いました。

 

V.今回の個展での新作は、心臓型の容器に花を活けることができる一輪挿しを多数発表されていますが、これらも高橋さんのセンスが光るユニークなアイディアだと思いました。

T.前回までは、これらの心臓をひとつひとつの箱に詰めて「標本」のようなイメージを強く持たせましたが、今回の「Humanimal(ヒューマニマル)」では日常生活に使用できるもの、生活の中に飾ることができるものを作ることに努めました。

今回のような作品は、学生の頃から携わっているアートプロジェクトに影響を受けています。

プロジェクトの目的は「日常にアートを定着させる」ことで、美術館やギャラリーではなく、自宅やレストラン等、日々自分が生活する場所にいかにアートを根付かせるかという事です。

活動では美容室やレストラン等の日常私たちが使用するお店と提携して、それぞれの店舗に4ヶ月に1度のスパンで新しい作品を飾ってもらっています。

この活動を通じて、今回のような生活と直接繋がるような作品が生まれました。

 

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V.確かに、今回の高橋さんの作品は自分の生活の中で、季節の花を活けたり、アクセサリー類は出かける際にお供にする等、パートナーのような愛おしさがあります。

また今回、写真を使ったインスタレーションにも挑戦されていますね。

 

T.写真を使ったインスタレーションもイメージを覆す試みです。作品に触れても濡れても大丈夫なものだよ、とビジュアル面からも伝えたいと思いました。

これらの写真のポージングはモデルさんにお任せしていて、皆さん自由に心臓のオブジェを胸元に持って行ったり、握りしめたりして撮影に参加してくれました。中でも子供が写っている写真は気に入っています。子供が大人と同じオブジェを持つと、全くスケールが異なって別のものに見えたりします。同じものであるのに、違った見え方がすることも作品を楽しむ醍醐味なんだなと感じました。

 

 

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 V.これらの心臓をモチーフにしたシリーズは今後も展開される予定ですか。

T.はい。今後も心臓シリーズは続けていきたいと考えています。

今回は爬虫類との融合を生み出しましたが、別のの動物と組み合わせてみたり、割れている形などを作ってみたり、極端に大きなサイズを作ってみたり、色々と挑戦してみたいと思っています。

 

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 進化し続ける高橋さんの作品は2/18までご覧いただけます。

この機会を是非お見逃しなく!

 

 

 

高橋邑木個展「Humanimal」展示WEBページはこちら

'18/2/6 〜 2/18

高橋邑木個展「Humanimal」 展示室B

入場料500円(展示室AB共通)

平日12:00~19:00 土日祝12:00~17:00

 

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Ciou展「Cosmic Fantasy」

 
現在ヴァニラ画廊では、フランスの作家CIOUの個展を開催中です。
展覧会開催にあたり、来日したCIOUさんに制作のお話を伺いました。

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ヴァニラ画廊(以下V)
今回の展覧会で展示してある作品は、前回初めて来日した際に、色々とインスパイアを受けて制作したものとお聞きしました。
 
CIOU(以下、C)
私は元々、幼少期にフランスのテレビで日本のアニメーションや漫画に多く触れあってきました。
そして、日本のアートに関しても幼いころから両親と共に、伝統的なものからポップカルチャーまで幅広く見て育ちました。
なので、前回来日した際には、子供の頃から慣れ親しんだ風景にすっと入っていくような感じがして、とても不思議な感覚を味わいました。
 
新しい作品を描く事は、様々な影響を色々なものから受けますが、実際に日本という国を見て、私の中で思う部分があり、今回の個展の作品は色々と自分の中で湧き上がってきたものを描きました。
国立博物館で見た太平洋の展示や、ミュージアムで見た妖怪の本、(ものが、年を経て妖怪になるという概念がとても面白いと思いました。)日本の自然にはとてもインスパイアされました。
 
V:CIOUさんの作品は、様々な女性像が描かれています。精霊や女神のように描かれている事が多いですが、女性たちを中心に作品を描く理由はありますか?
C:私は自分がパワフルな女性を描く必要があると思っています。
作品にはストーリーがあり、それには主人公がとても重要です。
ゴッドマザーや魔女、タトゥを施した女の子達や女神、強い女性像ミックスして、描いています。
 
V:確かにとてもストーリー性が強い作品が多いと思います。1枚の作品から、様々なストーリーを想像できますね。
C:テーマはアニミズムやニューカルチャー等、抽象的なテーマを考えているので、観る人のイマジネーションを刺激するような作品が描きたいと思っています。

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V:CIOUさんの作品の特徴といってもいい、とても繊細で細かな線描写や、サイケデリックな色使いはどのような形で生まれるのでしょうか。
C:作品の制作は、まず最初にスケッチを行います。イマジネーションが湧くように、自然と触れあい、美術館を訪れ、そして今まで撮りためた写真などに目を通します。
次に、90年代からのイラスト集を見て、モチーフのリサーチを重ねた上で、別々にスケッチしたものを、コラージュ的に1枚の作品の中に納めます。
(別々の紙に描いたものをコラージュしていくやり方です。)
 
紙の上のドローイングの上から、アクリル絵の具で色を重ねた上で、ここから大きな仕事に取り掛かります。
大鏡と、ロットリングペンで細かく線描を重ねていくのです。

f:id:vanillagallery:20171111132756j:plain(作品一部・色の上から細かな線描で描く。)

V:拡大鏡を使って、あの繊細な線描が生まれるのですね。
C:とても根気強く作業を続ける必要があります。道具といえば、日本に来ると、世界堂に行って、画材を買うのも楽しみの一つです。(笑)
私が日本に影響を受けて、作品を生み出したように、私の作品も色々な人の想像力を刺激して、新たなイメージの展開につながればと思います。

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2017.11.08
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CIOU展「Cosmic Fantasy」
11月7日(火)~11月19日(日)
展示室B
入場料500円(展示室AB共通)
平日12:00~19:00
土日祝12:00~17:00
 
Ciouは、フランス南部のトゥールズに生まれました。
80年代に幼少期を過ごした彼女は日本のアニメや漫画、そしてスター・ウォーズ、ディズニー、SF映画を見て育ち、一日中絵を描いていました。
10代になるとジョイ・ディヴィジョン、パンク、グランジ、ハードコア、後にはブラックサバスといった音楽に浸り、
コミックやイラスト、B級映画にアメリカのポップアートカルチャーが混ぜ合わさったローブローアートに、芸術的・美的共感を覚えるようになりました。
2004年にニューヨークでの個展を開催し、その後、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアをはじめ、世界中で展覧会を開催しています。
Ciouはヨーロッパ、アメリカ、メキシコ、そして日本のグラフィック分野を融合させ、自然・死・異教・美しさを描き出します。作品内にダークな側面とキュートな側面を兼ね備え、奇妙で民話的な趣と、空想的なテーマを取り込み、唯一無二のCiouの世界観に昇華するのです。
彼女の絵の世界は、チャーミングな奇人や、異分子、タトゥを施した女の子たち、躍動的に踊るニンフ、夢幻的な動物や、擬人化した植物がアシッドな色彩で描かれ、まるで奇妙なカーニバルに遭遇するような喜びと驚きがあると評されています。
ヴァニラ画廊での今展示「Cosmic Fantasy」では、2016年に来日し、日本の自然の美しさに触発されたCiouが描いた新作(環境、神話、そして、かぐや姫や親指姫、妖怪たちのおとぎ話にインスパイアされた作品)と、立体作品を展示いたします。
驚くほどに繊細でありながら、プリミティブなダイナミズムに満ちたCiouのダークでキュートな世界をどうぞご高覧下さい。
 

Ciouプロフィール

1981年フランス/トゥールズ出身
2004年ニューヨーク Flux Factory galleryにて初個展。
パリ、バルセロナブリュッセルアムステルダム、シアトル、ローマなど各国で展覧会を開催。
La Poste, Morphik, Nookart, ArtsBd , Sony, L’Aubusson等の企業とのコラボレーション多数。
出版
2009年『Chat siamois』editor by Venusdea
2014年『Ciou collected art』Kochxbos Publishers
2016年『Thumbelina』edited by Scutella

ダニエル・ジョンストン展 「HI,HOW ARE YOU?」

人は何かを忘却する事で、内的世界と折り合いをつけ大人になっていく。

全てを忘れなかったダニエル・ジョンストンは、今も私的な宇宙の中で歌い、遊び、愛し、憎む。

悪も善も、聖も俗も尊卑も無い、透明な場所でただひたすらに。

遠くへ行ってしまったイマジナリーフレンド、愛する人へのオブセッション、霞の向こうに消えた夢のひとかけら。

全てを忘れてしまった私たちは、ダニエル・ジョンストンの作品をどう見るべきなのだろうか。

なかった事にしていた傷跡に、郷愁にも似た儚い疼きが必要ならばと、今回ダニエル・ジョンストン・コレクションを開封した。(H.Nakajima)

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ダニエル・ジョンストン展 「HI,HOW ARE YOU?」
会期:2017年10月9日(月・祝)~10月22日(日)
平日(月~金)12:00~19:00、土・日・祝・最終日:12:00~17:00
会場:ヴァニラ画廊 展示室AB 入場料:1000円

 

この度、ヴァニラ画廊ではアメリカのミュージシャンでありアーティストのダニエル・ジョンストンのコレクション展を開催いたします。
ダニエル・ジョンストンは、無垢な表情をしたカエルのような生き物が印象的なジャケットのアルバム「Hi,How are you?」など1980年代から40枚以上ものアルバムを製作

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し、そのシンプルで美しい楽曲はニルヴァーナカート・コバーンデヴィッド・ボウイなど著名なミュージシャンに影響を与え、音楽シーンにおいて神秘的な存在として世界中で熱狂的に支持されています。
2005年にはその半生が綴られたドキュメンタリー映画悪魔とダニエル・ジョンストン』が公開されるなど、アメリカのアンダーグラウンドの象徴としてその名を馳せてきました。

 


氏は音楽と並行して、主題を同様としたアートワークの制作を続けてきました。
作品内に登場するのは、1つ目の不気味な生物や悪魔、彼の永遠の恋人・ローリー、フランケンシュタインなどのモンスター、性と畏敬の対象としての女性、おばけのキャスパーやキャプテン・アメリカといったアメリカン・アイコンの数々です。
サイケディックな色使いで描かれた奇矯なこれらの生物は、彼の心の中の神話的世界観をダイレクトに投影し、各国でカルト的な人気を得ています。
過去にはアメリカ各州、フランス、ベルギー他欧州諸国にて数々の展覧会を開催してきました。
日本で初となるヴィジュアル・アートのコレクション展となる本展では、カラー原画、モノクロ原画をはじめとした100点以上の作品や、活動初期の一本ずつダビングしたカセットテープなどのコレクションの数々を展示販売いたします。
孤高の鬼才・ダニエル・ジョンストンの魅力に触れることができる貴重な機会です。

 

コレクション協力: H.Nakajima, Daniel Johnston

 

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ダニエル・ジョンストン

1961年 アメリカ合衆国ウェストバージニア州出身。
アーティスト、ソングライター、パフォーマーとしてカルト的な人気を博し、創造性に富んだ作品を数多く発表する。1980年代よりトム・ウェイツソニック・ユースカート・コバーンなどアーティストに支持され、数多くのメディアにも取り上げられた。
作曲数は500を超え、彼の人生を綴ったドキュメンタリー映画悪魔とダニエル・ジョンストン』(2009)によって、音楽のみならず、アートや生き様に関心が再び高まっている。彼のアート作品は、2006年のホイットニー美術館の隔年行事にも出展されている。
2006年にHighwire Musicからリリースされた新しいコンピレーション・アルバム「Welcome To My World」、再リリースされた「Hi How Are You / Continued Story」と「Yip Jump Music」を含め、30枚を超える彼のアルバムの半数以上が今なお流通している。
カート・コバーンが着ていたダニエルの「Hi How Are You」Tシャツは、2006年にヒューストン・クロニクル紙で「世界中で最も需要の高いインディー・アーチストのTシャツ」と評されている。
米国をはじめ、カナダ、ヨーロッパ諸国、日本などでツアーの実績もあり、2003年、2010年と来日を果たし、ライブを行った。

 

 

 

 

 

 

髙木智広展「兎狩り」

 

100号のキャンバスに描かれた「兎狩り」と題された作品。巨大な兎にまたがった女性像は、朝焼けの中で勝利を鼓舞する武者絵のようにも、その白装束から古代の神の姿のようにも見える。
作品のダイナミズムと呼応するように、命のスパイラルの上にある歓喜と哀感に満ちた咆哮が聞こえてくるようだ。

髙木智広は1995年にヨーロッパで古典絵画技法を研究し、一貫して作品テーマの根幹には自然と人との繋がりを据え、数々の個展、グループ展で油彩作品を発表し続けている。
人と動物が混じりあい生まれた半人半獣の神話画のような様式美と奇想的な楽園を思わせる卓越したビジョンを提示してきた気鋭の作家である。

今回2年ぶりとなる弊画廊での個展では、近年の代表作から、最新作までこれまでの活動を総覧できる作品点数を出品いただいている。

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2連作の「雨宿り」1つはしとしとと滴る雨水の向こう側にぼんやりと馬の姿が浮かぶ
そのたてがみの中には暗い面持ちをした女が、何かから身を守るように、じっとこちらを見つめている。対するもう1つは馬の姿は骨のみになり、やはりその向こうから女が怪訝な顔で濡れた空を見ている。
その姿は北欧神話の夜の女神ノートが如く、地を濡らす化身のような存在感と不気味さを彷彿とさせる。

 

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「rabbit hole」「狼少女」「rabbit bandage girl」「輪廻」といった一連の作品では、少女と動物たちがまさに溶けるように混じりあい、互いを身にまとい、カオスが生み出した女神ニュクスのように、暗闇の中から立ち現れるその姿は優雅な官能すら醸し出す。

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そして「夕顔」では今度は白い魂のような人体が呼応しあい、絡み合いながら、新しい生命体へとその姿を変えていく。
朽ちていく肉体、滅びゆく魂と共に、祈りの中に生まれた新たな胎動すらも感じる大作である。(この作品は、2016年弊画廊で開催した「幽霊画廊」に出品いただいた。)

 

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また、近年の代表作の中でも異色作であると言える「烏賊を運ぶ日」。
2015年に描かれたこの作品は、一見ユーモラスでシュールな面が顔を覗かせるが、その実、艶めかしい暗喩、神話的な情景、そしてグロテスクな土着的神秘性に満ち溢れ、暗いノスタルジーの中を彷徨うような、覚めない白昼夢の中に見るものを誘う怖い絵である。

 

 


総じて、自然と人間の関係から、異様で恐ろしくもありながら、同時に豊穣で郷愁的な世界を真摯に、そして克明に描き出してきた作家、高木智広。
今展示はその旧作から新作までを包括的に振り返る事のできる貴重な機会となる。

(ヴァニラ画廊田口)
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髙木智広展「兎狩り」

2017/9/26(火)〜10/7(土)
http://www.vanilla-gallery.com/archives/2017/20170926a.html
ヴァニラ画廊 展示室A
入場料500円(展覧会室AB共通)
営業時間
平日/12:00-19:00 土,日/12:00-17:00(会期中無休)

今展「兎狩り」では、兎を受難の象徴として、様々な視点から描いた絵画作品を展示します。
それを通じて人間の狂気、自然の猛威など、自然と人間の関係を表現します。(髙木智広)

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高木智広はヨーロッパで古典技法を取得した後、野山で動植物と戯れて過ごした幼少時の原体験と、パプアニューギニアでの滞在で巡り合った精霊信仰から見出した「人間と自然の共生」をテーマに据えながら、自身の作品に色濃く反映させてきました。
ヴァニラ画廊にて2年ぶりとなる個展「兎狩り」では、人間が無意識的かつ半ば暴力的に生み出した自然との「境界線」を、豊穣なイメージの網に迷い込んだ兎に託して克明に描き出します。
旧作から新作まで作品を包括的に振り返りながら、人間と自然の在り方を可視化し、その本質に迫る試みにご期待ください。

◆髙木智広 プロフィール◆
西洋の古典技法を用いた絵画作品を中心に自然と人間の関わりをテーマに制作。
近年では日本人の精神の源流となる八百万の神々をモチーフとしている。
国内外で個展グループ展多数開催。