ヴァニラ画報

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川上勉展「Sleeping beauty」ー美しく柔らげな死相を浮かべる娘たちができるまでー

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目を大きく見開く「medusa(メデューサ)」

一度、目が合ってしまったならばもう二度とは動けなくなる伝説の怪物が、どうしてもこんなにも柔らかで、そして深い哀しみに包まれた表情を浮かべるのでしょうか。その秘密は製法と川上の「死」に対する特別な衝動に隠されていました。

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川上の今回の出展作品は全て漆で制作されています。漆の像と聞いて、奈良時代興福寺の阿修羅像や東大寺の不空羂索像を思い浮かべる方も多いはず。川上の作品はこれらの時代の仏像とほぼ同じ乾漆で制作されています。粘土で土台を作った上に漆を浸した麻布を覆い固め、長い時間をかけ乾燥させた後、中の原型を取り去り彩色を施し、作品が完成します。

乾漆造の特徴として金属や粘土が使われないため、非常に軽いことがあげられるでしょう。このことが第一回ヴァニラ画廊大賞奨励賞作品でもある「macabre」(2012年)のように"骨で自立する娘"といった豊かなイマジネーションをかたちにすることができるのです。

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なぜ、ここまで手間や時間をかけた製法で、川上は「死」を具現化するのでしょうか。その衝動ともなる「死のイメージ」への想いを伺いました。

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私が今回の個展で展示したような、「死」を連想する作品を作りだしたのは5年ほど前からです。

それ以前は、同じ漆を用いた制作技法でしたが、現在の作品に比べると、もっと伝統的なスタイルで人間の内面性や精神性を表現していました。

それがなぜ「死」をテーマに作品を作るようになったのか。

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ごく身近な所に生まれた生命が、私に「死」を強く意識させるようになったことが、その理由のひとつ。

もうひとつの理由は、彫刻という物体や、それを形作る物質で生命を表現することに違和感を感じてしまったこと。

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私は、これまで私が探求していた人間の表現が偽りに思えてならなくなってしましまい、

生命表現のない人間の表現」 そして 「死の表現」に人間表現のリアリティを見い出したのです。

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川上勉展「Sleeping beauty」(展示室A/入場無料)は3月1日まで。

乾漆造が引き立てる世にも奇妙で、美しく柔らかな死相の娘たちをぜひともご高覧下さいませ。

 

 

川上勉展「Sleeping beauty」

「死」のイメージを、思いつくままに造形してみた。

メメント モリ」を表現しようとした訳ではない。

ただの、物体としての人を表現したかった。

わたしは、命の表現より死の表現に惹かれる。

わたしは「死」を美しく表現したい。

それは、「死」に対する内なる恐怖心の表れかもしれない。

 

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