泥方陽菜展「剥離する真夜中」特別インタビュー
泥方陽菜展「剥離する真夜中」
現在ヴァニラ画廊Bルームでは泥方陽菜展を開催しております。10月の人形月間の最後を飾る作家の作品は、どこか虚ろで夜の亀裂から現れたような作品たち。
その制作者の泥方陽菜さんに、作品に付いてお聞き致しました。
◆人形を作り始めたきっかけなどを教えて下さい。
泥方:ずっと絵を描いていたのですが、イラストの総合雑誌に天野可淡さんの作品と与偶さんの作品が掲載されているのを見ました。そこからすぐに人形制作に移行した訳ではないのですが、ずっと絵を描きながらも人形というものが気になっていたのです。
人形のイメージ自体はずっと気持ちの中に持ち続けていました。
油彩で美大の受験を受けると決めて、予備校でデッサンを習っていたのですが、そこでベルメールの写真を見てしまって...。
◆禁断の...(笑)
泥:そう、禁断の...(笑)それからはずっと描くものが全部人形!
◆そこから具体的に独学で人形の制作を始めたのですね。
泥:丁度二十歳くらいから作り始めました。全部が全部独学というわけでは無くて、人形の写真集や展覧会を見ながら、試行錯誤してきました。
◆なぜそこまで人形作品に惹かれたのでしょうか。
泥:人形は見る人の精神状態で具体的に顔が変わってくる部分がとても好きなのです。平面作品も人の精神状態に関わって、印象が変わる事はわかるのですが、人形だとそれが如実に表れるので、とても面白いと思います。
◆今回写真家のクロダミサトさんに撮り下ろしてもらった作品は、本当にその要素が現れていますね。
写真の傍に同じ人形を置いているのに、全く違った印象を受けます。
泥:自分の作品を他の人に撮ってもらったのは初めてなのですが、私もとても驚きました。自分の作品では無いような、新たな発見がありました。
人形の他の魅力として、やはり動いて遊ばせる事ができるというのが大きい魅力だと思っています。
動かすのは私達なのですが、本当に支配されているのはどちらなんだろうと、動かされているのはこちらかもしれないというとても不思議な気持ちになりますね。
◆今回顔の無い(顔からお花が生えている)作品が2点ありますが、これはどのようなイメージなのでしょうか。
泥:今回個展を開催するにあたり、グループ展などでは出せないような作品を制作しようと思い出品しました。私はわりと悪い夢がイメージソースになっていて、この子たちも顔の内側から何か悪いものが噴き出すような夢を見てから制作しました。
その他にも足が変形している人形作品を制作したのですが、こちらは悪いものが足から抜けていく、解放されるようなイメージです。
手先や足先、顔は制作していて楽しいので、イメージを託しやすい場所ではあります。
◆悪夢を自分の中でろ過して、人形に託しているのでしょうか。確かに皆穏やかな顔をしているのに、目をあわせてくれませんね。
泥:どこを見ているのか定かではない表情が好みなのかもしれません。
いつかふと気持ちが通じ合い、自分だけに視線をあわせてくれるような、そんな心に残るような作品を作り続けていきたいと思っています。
泥方さん、ありがとうございました。
今回全て新作という熱のある作品揃い、泥方さんが言うように、全ての作品がその時々によって表情を変えます。
視線をあわせてくれるのは誰なのか、それぞれの作品の前で、その繊細な表情と対話して頂きたいと思っております。
展示は11月2日(土)まで、是非足をお運び下さい。