ヴァニラ画報

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MELANIE PULLEN メラニープーレン 写真展

ラニー・プーレン(1975年生まれ)はアメリカを拠点に、世界各地で活動を続ける写真家です。

独学で試行錯誤の中で写真技術を学び、「High Fashion Crime Scenes」シリーズを発表、センセーショ ナルな反響を巻き起こしました。
このシリーズはニューヨーク市警およびロサンゼルス市警の犯行現場ファイルに基づく100枚を超える写真からなるメラニーの代表作です。自身について、「偶然」を大事にしているが、実際には「気が狂いそうになるまで自分自身を追い込む」完全主義者である、と語るメラニーは、このシリーズを 制作するにあたり、作品ごとに80名近いスタッフとモデルを使用し、時には1作品に最長で1か月かけて制作を行いました。衣装とアクセサリーには1300 万ドル以上をかけ、煌びやかなハイブランドを散りばめ、犯罪現場を(多くはその被害者と共に)再構築する事によって、バイオレンス・イメージを容易に受け 取る私達に、暴力の本質とは何かを深く問いかけます。

今回はその「High Fashion Crime Scenes」シリーズと特製本を日本で初めて展示販売致します。

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【死体への想像力】 飯沢耕太郎(写真評論家)

 メラニー・プーレンの「ハイ・ファッション・クライム・シーンズ」はとても興味深い写真シリーズだ。この作品の元になっているいわゆる犯罪現場写真は、警 察に属する専門カメラマンによって、19世紀以来大量に撮影され続けてきた。だがこれらが、単純に証拠を保存するためという理由だけでなく、むしろわれわ れの本質的な「見たい」という欲望に応えるために撮影されてきたことは、1980年代以来、この種の写真のアンソロジー写真集が多数刊行されていることで もわかる。ではなぜ、われわれは犯罪現場写真に惹かれるのか。端的にいえば、それはそこに死体が写っているためだ。
 死体は非日常の極みであるだけでなく、それ自体が不思議な吸引力を秘めている。いうまでもなく、メラニー・プーレンもそれに魅せられた一人だ。彼女はこ の作品の制作の動機について、写真集のあとがきに面白い話を書いている。プーレンは子供の頃、自然写真のコンテストの審査をしていた祖母の部屋で、一枚の 写真を見せられた。コンテストの最高賞を受賞したその作品には、雪原と樹以外には何も写っていないように思えた。ところが、写真をよく見ると、樹に向かっ て続いている小さな動物の足跡が、ある場所で不意に途絶えている。つまりそこには、猛禽が動物を襲い、殺すという見えないドラマが秘められていたのだ。
この「見えないドラマ」を見出すという想像力こそが プーレンの写真制作の鍵になっていることは間違いない。彼女が丹念に仕組んだ殺人現場には、必ず何 かもっと複雑で、表にはなかなか現れてこない物語が埋め込まれているのだ。それをあたかも推理小説のように読み解きつつ、モデルたちが身に纏う、洗練され た「ハイ・ファッション」を愉しむことができれば、これに勝る極上の視覚的体験はないだろう。

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【メラニー・プーレンプロフィールMELANIE PULLEN 】

1975年ニューヨーク市に生まれる。現在ロサンゼルス、カリフォルニア州在住。

ニューヨークのウェストビレッジで育ったメラニーは、Audubon Magazineの写真エディターでありThe Guilfoyle Reportの創設者でもある祖母アン・ギルフォイルから影響を受け、(メラニーが子供の頃、家族には作家、出版業者、詩人、画家がいた。70年代から 80年代には、幼年期の 家にAndy Warhol, Allen Ginsberg, Emily Glen, Shel Silversteinらが頻繁に訪れていた。)10代で最初のカメラを手に入れる。その後は独学で様々な刊行物、雑誌、カタログ、レコードレーベル用に 写真を撮り始め、Beckの2004年のアルバムGueroおよびThe Informationを手がけているほか、Devendra Banhart、JoannaNewsom、Rock Kills Kid、The Black Keys等数多くのミュージシャンの写真を撮り下ろしている。

High Fashion CrimeScenesシリーズ・violent timesシリーズにて、アメリカ国内外で幅広く個展・グループ展を開催している